暁 〜小説投稿サイト〜
少年少女の戦極時代U
禁断の果実編
第89話 憎まれていた?
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 咲たちはいつものように“ドルーパーズ”にて昼食を取っていた。一緒にいるのは紘汰に戒斗、それに湊だ。

 戒斗と湊の食事が終わる。彼らは先にガレージに戻ると言って店を出て行った。

「紘汰くん、たべないの?」
「ん〜、今日は朝から食ってないはずなんだけど。腹減らねえんだよなあ」

 そこへ、店のドアが開閉する音がした。
 戒斗たちが忘れ物でもしたのかとふり返ると、入ってきたのは、光実だった。

「紘汰さん。話があります」

 紘汰は戸惑いを浮かべたが、それよりも光実と再会できた喜びが勝ったようだった。紘汰はスプーンを置いてカウンター席を立った。咲も紘汰を追いかけようとした。

「ごめん。咲ちゃんは遠慮してもらえるかな? 二人きりで話したいんだ」
「え……あ、うん」

 そう言われては咲も引き下がるしかない。

 紘汰と光実が“ドルーパーズ”から出て行った。少しの不安は残ったものの、咲は再び食事に専念した。





 高架下まで来て、ようやく光実は口を開いた。

「紘汰さん。面白い話を聞いたんです。咲ちゃんのヒマワリアームズについて」
「! どんな話だ!?」

 大人になれないかもしれない。今でも忘れられない湊の宣告。それを光実の「面白い話」が覆してくれたなら。紘汰はそんな希望を抱いた。

「まずフェムシンム――オーバーロードは、あの子みたいな存在を『ジュグロンデョ』と呼ぶそうです。意味は、天翔ける者。闘争の時に、勝者になる者のそばに現れる。オーバーロードの伝承では、ジュグロンデョが付いた戦士は、時代を統べるも同然の勝利を得ると伝わっているそうです。僕ら風に言うなら、勝利の女神ってとこですね。そして今。その小さな女神は紘汰さんのすぐそばに付いてる」
「ミッチは、その勝利の女神ってのが、咲ちゃんだって思ってんのか?」
「状況証拠的にはね。――紘汰さん。ここまでで何かおかしいと思いませんでした?」
「え?」
「何で僕がオーバーロードの伝承まで知ってるか」
「いや、今日まで連絡なかった間に、タワーに忍び込んで盗み聞きでもしたのかなって」
「……ほんっと、都合のいいように物を考えますよね、あなた」

 光実は長い溜息をついた。紘汰は気まずくなる。自分は楽観思考だとある程度の自覚はしているが、光実をここまで呆れさせるほどだったのか。

「僕がオーバーロードと繋がってるスパイで、情報を直接聞いた、って可能性は考えないんですね」
「いやミッチはそんなことしねえだろ」
「そういう所が――」

 タン。高架下に、革靴が大きく一歩を踏み出す音が反響した。

「甘いんですよ、あなたは!!」

 頬にひどい衝撃が走り、口の中が血の味でいっぱいになった。紘汰はその場に尻餅を突いた。
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ