籠の鳥の冒険
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その言葉に、少々面食らいつつも部下は頷く。
「どう言う事だ、ミッターマイヤー」
「奇妙だと思ったんだ、小鳥のいない鳥篭、つまり、小鳥に何か、多分小型のボイスレコーダーか何かを付けていたとしたら!」
ミッターマイヤーの言葉に、一瞬深緑色の瞳を見開いたジンツァーは「時間を下さい」と言って、足早に出て行った。
その夕刻、連絡を入れたミッターマイヤーを、オッペンハイム男爵はとある墓地に呼び出した。
ミッターマイヤーはオッペンハイムに、小さなボイスレコーダーを差し出した。
「一二年前、小官はとある公園で学友と二人で、一羽のカナリアを見付けました。
片足を失い、その小鳥は暫くして亡くなりました。
その後で、友人はその公園で小鳥の足の繋がった、小さなボイスレコーダーを見付けたそうです。
これは当時の物ではありませんが、中に入っているのは当時のデータだそうです。
つまり、B嬢を殺した犯人は存在しません。彼女は、三時前に亡くなっていたのでしょう。
ノックか、メイドの誰かの声に反応して再生されるようにセットしたボイスレコーダーでアリバイを作り、教育係の女性陣が踏み込んだ時に、驚いたカナリヤが逃げるよう籠の戸を開けておいて」
再生された、澄んだ声を耳にしながら男爵は小さく頷いた。
「確かに、あの子の声です。ありがとう、やはり覚悟の自殺だったのですね」
男爵の言葉に、ミッターマイヤーは顔を上げた。
「見当は付けていたんですよ、只、外聞を憚った親族に握り潰されましてね。挙句に、色々無理難題を吹っかけられつつこの間の戦役に引き込まれ、そのまま、ね」
墓地の方を見ながら、そう言った男爵はこう付け加えた。
「あの子は、確かに死ぬと言う短絡的な方法とは言え権門貴族達に抗いました。奴に、それだけの度胸があれば、きっと」
そう言うと、頭を下げてエドマンド・フォン・オッペンハイムは墓地に入って行った。
小柄な背中を見送ると、ミッターマイヤーも踵を返し、彼を待つ親友の方へと歩き出した。
ende
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