伊月「俺は――」
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す。
「手短に頼むぞ」
「うん。えっとね、何でこの間のデートで勝手に逃げ出しちゃったのかなって」
その瞬間、クラスに沈黙が訪れる。
数十秒後、俺は周囲の生徒から槍のように鋭い怨嗟の視線を感じた。……理不尽だ、あまりにも酷すぎる。
そんな俺の想いなど知らず、本山は本当に不満そうに、シンとしたクラスの中に愚痴を零し続ける。
「あの時の代金、全部私が支払ったんだよ?私はお金に関してはうるさい人だから、ちゃんと返してもらうからね」
その後も本山はあの後の事を一人でベラベラと喋り続ける。当然、俺の知った事では無いものだったのだが、クラスメイトの睨みの恐ろしさに、教科書以外に目を向けるのが怖かった。
そんな中、
「葉山君、人と話す時は目を見なきゃダメだよ?ホント、恥ずかしがり屋さんなんだから!」
と、本山がフフフと楽しそうに笑い、優しく俺に注意してくる。ハハハ俺の心中を察しろこの腹黒女め!頭かち割んぞ!
ヤバい、周りの奴らの危険度が上昇してる気がしてならない。このままだと休み時間になった瞬間殺されちまうぞ俺。
だが、この中で一番恐ろしい視線を感じたのは、俺の真後ろからだった。
背中を銃で突き付けられたような感覚。人は眼力で殺せるとは聞いた事があるが、もしかしたら本当に出来る人がいるのかもしれないと、今ならそう思える。
なにせ――今の志乃からは、ガチな殺気みたいなものがガスのように湧き出てるような感じがするからだ。
確証は無い。勿論抽象的な話に変わりは無い。でも、背中がゾクゾクするのだ。突然氷を背中にぶちまけられたように。……ただし、俺はM気質では無い。
もう考えるのが嫌になった俺は本山に「俺寝るわ」とだけ言って、顔を机に突っ伏し、その周りを腕で覆った。去年寝不足で授業を寝てしまった時にやってた技だ。幸い今は自習だし、多分このまま寝れる、っしょ……。
俺は、完全に意識を途絶させ、暗い暗い休息の海の中に飛び込んで行った。
*****
目覚めは異常な悪さだった。頭が痛い。鈍器で殴りつけられたようにガンガンする。もしかして、俺が寝てる間にクラスの奴らが椅子の端ぶつけてたんじゃね?それでも起きない俺もどうかと思うけど。
そんな冗談はともかく、俺が頭を前に起こすと、丁度帰りのHRだった。どうやら、午後を全て寝過ごしてしまったらしい。誰も起こしてくれないなんて、あまりにも酷すぎるだろ。これは虐めとして訴えても良いんじゃないか?
担任は何故か片手にホッチキスを持ちながら、係の連絡や明日の連絡をしている。まぁ、あの人は常によく分からないので、あまりそこに集中しないようにする。でも、とても良い人であるのは間違いない。
や
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