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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第五十一話 会議は進まず、されど謀略は踊る
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、今その『茶会』がまさに開かれていた。座を囲むのは五将家の政争においては中立派とされる陸軍軍監本部情報課次長である堂賀静成。そして西州公子西原信置に東州公の義弟である海良末美と、実力者ではあるが主導権を握る事が殆どない三名であった。

「ほう?佐脇の小僧が〈帝国〉の旅団長を?」
 陸軍軍監本部情報課次長である堂賀静成は面白そうに眉を上げて尋ねた。
「はい、間違いありません次長閣下。第三軍司令部・つまり西津閣下からの報告です」
 西原信置大佐――西州公爵家長男は黒茶にアスローンモルトを垂らしながら面白そうに言った。

「仮にも剣虎兵、本来はそういう使い方をするものでしょう?それでも大当たりしたのだから、存外に守原閣下も実用を重んじていたのかもしれませんが」
 東州公爵・安東家の利益代表者として政界で存在感を高めている海良大佐が肩を竦めて言った。

「だといいがな……それはそうと軍監本部としては、龍州での対応はどうなっていますか?
一個師団を潰したのはいいが、見通しも打つ手もなし、などとなったら――いよいよもって陸軍への不信が高まりますよ?」と信置はかるく肩を竦めると堂賀に問いかけた。彼自身も陸軍大佐であるのだが――

「その通りだ。これに関しては駒城の構想を基本に折衝を行う予定らしい。少なくとも当面はその方向で働きかけるべきだろう。今のところ、駒城と西原は第三軍に関しては運命共同体といってもいい。後衛に立っている龍州軍も近衛も相当被害を受けるだろう、その穴を埋めるためにも虎城で粘らなくてはどうにもならない――無傷の護州が何を言い出すかが気がかりだ。決戦などと言い出す筈はないが」

「安東家としては第二軍を早急に東州まで退避させることが第一です。その後も皇都との安全な航路を確保しなければどうにもなりません」
 安東家の利益代表者の言に堂賀も頷いて見せた。東州は現在、食糧の自給率は八割程度だ。工業力・経済力は四半世紀前を凌ぐ勢いであったが、農村部の復興は十全ではない。
 これは安東家が天領を真似た政策で都市化による税収確保を第一としていたからだ。
「あぁわかっているとも、軍事的にも経済的にも東州は保持せねばならない。その点については軍監本部からも働きかける事は約束する。だが、その後はどうするつもりなのかな?」

「さて?私からはなんとも―――」と若い大佐はかるく笑い、そして真剣な口調で言った。
「ところで、護州から出ている案なのですが、皆様にぜひお二人に検討して戴きたいことがあるのです――」

「――護州だと?」
 堂賀は顎を撫でて聞き返した。
「――ふむ?」西原信置も興味深そうに姿勢を正す。
 二人の格上が食いついたのを見て海良は笑みを深めながらも慎重な口調で話を続ける。
「えぇというのもそのまま通しては我々
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