第四部五将家の戦争
第五十一話 会議は進まず、されど謀略は踊る
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場で功績を上げ、西原家の西津中将が彼らを含んだ第三軍を率い、敵師団を戦闘不能に追い込んだ。
そして龍州軍に皇州都護鎮台と東州鎮台・背州鎮台を主力とする第二軍も序盤の劣勢の中で健闘し、最後の最後、龍爆と騎兵集団による突撃まで耐え続けた。
「それは確かでしょうが、衆民院としましては――戦後に復興が滞るのも問題ではないかと」
舞潟章一郎の支持母体は廻船問屋や大地主、そして鉱山業者たちが多い。
皇主への尊崇を口にすることも多く、保守的な思想と自由経済への支持によって幅広い層からの支持をとりつけていた。
「儂は衆民と共に在りたいと願っております。それは大殿様も同様の筈です。
その為に我らは国家の藩屏として衆民と共に血を流しています」
「――ふむ」
老練の将家当主が言いたい事を理解したのか、舞潟の目に興味の光が宿った。
「――ですが、そうは思っていない者も居るようですな?
その者達はこの戦に於いて何の貢献を果たしたのでしょうか?
この一朝有事に御国の意思統一を阻害し、何ら貢献を果たしていないと云うのは問題だと思いませんかな?」
――守原は北領で大敗し、今回の戦に兵を出さなかったのだ。連中が兵を出さなかったからこそ負けたのだと噂を流せば衆民達の反守原感情を煽る事もできるな、そうなれば舞潟も此方に引き込めるか。彼の支持基盤は衆民院だ、執政である利賀殿との伝手もあるが、弓月殿の衆民官僚達と結びつければこの男の方が御しやすいか?
「――えぇ、そうですね、国内の意思統一は陛下の宸襟を安んじ奉る為にも必須です。
その為には強固な統率の下にある執政府が必要だと思いませんか?」
温和な善人めいた笑みを浮かべた舞潟に豊長も同様の笑みを返す。
――ふむ、まぁ口ではどうとでも言える、この男は守原側にも同じ事を言うだろう。
だが――
「えぇ、儂は衆民院に居たときから貴殿を高く評価しています。
私は優秀な政治家を大殿が必要とする時には、貴殿を推挙するでしょう、とても強力に」
――だがこの男が役立つのは我々の勝利が確定してからだ、今は互いに笑みを交わすとしよう。その時には執政府の実権は駒城――そして弓月殿が官僚達を統率する事になる。
――若き“英雄”に継がせるには十分な地盤だ。
「えぇ、その時には良き杯を交わしたいものですな――ところで豊長殿、近衛衆兵に居る駒城の末弟殿はご健勝でしょうか?」
「えぇ、戦場で将官を討ち取り、本営に迫ったそうです。
まったく頼もしい限りです。一度御紹介できれば良いのですが」
「えぇ、機会があれば、是非。」
そう言った舞潟の目は商人のそれとなっている。衆民人気の高い、かの衆民の英雄・新城直衛とのよしみを得たいのだろう。豊長としても彼には前線で武名を上げる事は都合が良い。
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