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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第五十一話 会議は進まず、されど謀略は踊る
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都の喉元に刃を突きつけられたのだ。我らもこの程度の無茶をせねばなるまいよ」
 宮蔵内相が重々しく溜息をついた。この老人も二十五年の太平が齎した文官達の間にささやかならざる独立意識を有していたのだ。
「私も駒州鎮台に協力を要請します。今現在、彼らは内王道に布陣すべく移動を行っています。彼らなら内王道沿いの移動を助けるくらいはできるでしょう」
 弓月伯が言った。
「彼らが言い出した事です、協力を勝ち取らせなければなりますまい。」
全員一致で軍部への協力要請で締めくくられたが――陰鬱とした空気は最後まで払拭される事はなかった。


同日 午後第六刻 衆民院議事堂付近料亭
馬堂家当主 馬堂豊長退役少将


 ひどく鬱屈とした空気が料亭の一間に漂っている。
 衆民院最大与党であり、ついに執政府の次席に総裁を送り込むことに成功した皇民本党の議員達は、誰もが黙りこくって酒を飲むかぼそぼそと隣の者と囁きあっている。
 既に彼らの栄華は〈帝国〉軍によって踏みにじられつつあるのをいよいよもって実感を持ち出したのだろう。
 彼らの総裁である舞潟章一郎執政代も普段の血色の良さを感じさせない青ざめた顔で彼らを観察している。執政府の次席である執政代の地位に衆民出身の彼が居る事は御国の在り方が良くも悪くも変わりつつある象徴とみなされていたのだが、それもこの戦争で変わりかねない。
「皆様方は何処で手打ちをなさるおつもりですか?」
 重々しい口調で逞しい体躯の老人――馬堂豊長が尋ねると、舞潟は弾かれたように視線を向けた。
「――私は、兵理の事には恥ずかしながら不見識ですので、戦況次第としかいえませんね。
馬堂閣下はこの戦をどのように見ていらっしゃるのですかな?貴殿は御本職を経験していらっしゃるでしょう?」

「儂はもう引退した老頭児(ロートル)ですからな、何とも」と素っ気なく返す豊長に舞潟は頭を振って笑った。
「御冗談を!官房の俊英に北領の英雄と素晴らしい後進を育てておいでではありませんか」
「ですから実務は若いのに任せて、儂は閑居して不全を為しておっただけです。
あぁいやはやこうも天下が騒がしくなっておりますから出てきたのですが」
と愛想良く笑みを浮かべて言った。
この狸爺め、と言うかの如く口元をひくつかせながら舞潟は重ねて問う。
「ならば、駒州様の御見識は如何なものでしょうか?」
 ――却説、どこまで話したものか。
 他の議員達も耳を峙てているのは間違いないが。
「そうですね――大殿のお考えは基本的に抗戦の一点張りですな。
〈帝国〉が音を上げるまで戦い続ける、詰まるところそれに尽きる単純明快な構想ですね。」

「〈帝国〉の財政悪化頼りですか・・・・それしかないのでしょうが。貴殿はそれだけではなさそうですね?」
 舞潟は
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