悪魔の島編
EP.17 デリオラ崩壊
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なって言ってるんだよ」
「あ、何か馬鹿にしたな!? よく分からんけど馬鹿にしたな!?」
「だから違うって、面倒くせーな……ッ!?」
陽気なナツの声に引っ張られるかのように、暗い思考を打ち切っていくワタル。
だが彼らは油断していた。とりあえずザルティを撃退したところで、少なからず心に緩みが出てしまった。
未だ問題は解決しておらず、その元凶が目の前にいたのにも関わらず、だ。
『グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
「「!!」」」
さっき――ワタルがナツに加勢する前に轟いたものよりも大きく、威圧的なデリオラの咆哮が洞窟内……いや、遺跡中に響いた。
ワタルとナツがハッと振り向くと、そこに居たのは――――
全身を絶対氷結の残滓で濡らし、頭部に鋭い刃物のように尖った二本の禍々しい角を持ち、体を鎧のような装飾で覆った悪魔が、剣山のように尖った歯を隠そうともしないで開けた大口で復活の調べを目撃者たちに刻み込む姿だった。
リオンとの決闘を制し、遺跡の地下の洞窟に到着したグレイが見たのは、幼い自分に二度――最初は家族との永久の別離、もう一度は自分の私怨が理由で師匠を永久に氷へと変えてしまった事――トラウマを植え付けた悪魔の復活の姿。
吠える度に周囲の空気を洞窟が崩れんばかりに震えさせているその風貌や、巨体から漂う威圧感も、かつて幼いころに味わった物となんら変わることなく、グレイはただ呆然としていた。
そして、デリオラの威圧感が物理的な力を持っているかのように周囲の水を逆立て小さな波を起こし、グレイの足に跳ねる。
その水はデリオラを封じていた氷のなれの果て。絶対氷結で氷となった師匠・ウルそのものだった。
「(ウル……)」
その水を手ですくうが、液体であるゆえにすぐに手から零れ落ちる。
そのことが、自分の罪を見せつけられているように思え、グレイは表情を哀愁に染めた。
自分さえ……自分さえデリオラに挑まなかったら。
何度自分をそう責めただろうか。
だが、幾ら自責の念に駆られようとも、過ぎ去った日々が戻ってくる訳でも、犯した過ちが償われる訳でもない。
ならば……やらなくてはならない。
「グレイ、いたのか!」
「その様子だと、決着はついたみたいだな」
「ナツ、ワタル……ああ。世話を掛けたな」
グレイが決意を新たにした所で、ワタルとナツは彼がこの場に来た事に気付き、近寄る。
氷で止血という、グレイだからこそできる荒療治で応急手当てをしたとはいえ、グレイは傷だらけだった。
だが彼は立ってこの場にいる。それはグレイがかつての兄弟子に勝ったという
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