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惚れたが負け
惚れたが負け
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だまずいけどな」
「嫌だ、そんなこと」
 そう言って頬を赤らめてきた。ここで俺は不思議に思いはじめた。
「ずっと先の話よ、そんなの。けれど」
 何か言っていることがどうにも臭く感じられた。まるで安物の恋愛ドラマのように思えてきたのだ。丁度中学生や高校生が主人公だとこんな感じになるという話の。
「けれど。これからずっと」
「ああ、わかったよ」
 何か大体わかってきた。もうこれ以上聞くつもりもなくなった。
「まあお手柔らかに」
「うん」
 やっぱりな、と思った。今の言葉に無意識かどうかわからねえが応えた。案の定こいつは最初から狙っていやがった。俺を狙ってたのだ。
 しかしどういうわけかやっぱり俺はそれでもよかった。あれよこれよという間にこいつと付き合うことにした。何だかんだで一緒にいようと思ったのは俺もこいつに惚れていたからなのだろう。だとすると負けは俺の方だ。惚れたが負けとはよく言ったものだ。俺は負けちまった。そして彼氏と彼女になっちまった。まあ負けても悪くない時もある。それだったら負けてやる。別に悪い気もしねえ。惚れた女が側にいてくれるのなら。


惚れたが負け   完


                                2005・11・26

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