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惚れたが負け
惚れたが負け
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に手を回してきた。そして一気に顔を近付ける。
 それで終わりだった。一瞬で何もかもが終わっちまった。
「これで・・・・・・他人じゃないよね」
 平田は顔を真っ赤にして俺にこう言った。
「これで・・・・・・っておい」
 かえって俺の方が面食らっちまった。
「何するんだよ」
「だって。赤の他人だって言うから」
 顔を赤くさせたまま言う。
「それで。こうしたんだけど」
「あのなあ」
 何か腹がたってきた。無性に腹がたってきた。
「やっていいことと悪いことがあるだろ」
「けど」
「けども何もねえよ」
 俺は言ってやった。
「こんなことして何になるんだよ。赤の他人がどうのこうのでどうしてこうなるんだよ」
「だってキスしたら恋人同士でしょ」
「どうかな」
 こうは言ってはみたが言われてみればその通りだ。こんなこと恋人同士でもない限りはしないものだ。この時は純粋にそう思っていた。それにつっぱねることも出来た筈だ。考えれば考える程あの時の俺は馬鹿だった。
「どうかなって」
 また泣きそうな顔になった。
「そんな・・・・・・酷い」
「ああ、わかったよ」
 何かもう見ていられなくなってきた。
「それじゃあこれからは赤の他人じゃないよな。これでいいな」
「うん」
 さっきまでの泣きそうな顔は何処に行ったのか急ににこやかになりやがった。
「それじゃあこれからも宜しくね、桶谷君」
「ああ、こっちこそな」
「何か、好きになっちゃったから。御免ね」
「最初からそうだったんじゃないのか?」
 ふとこう思ったがこれは言葉には出さなかった。
「ほら、よく言うし」
「どう言うんだよ」
「惚れたら負けだって」
「ってことは最初からこうするつもりだったのかよ」
「キスまでするつもりはなかったけれど」
「どうだか」
 そうは言っても何か悪い気はしなかった。実は俺もはじめてのキスだったのだ。そのせいもあった。
「だから、ね。これからも」
「毎日一緒に歩いて欲しいっていうのかよ」
「駄目かな、それって」
「そんなのでいいのかよ」
 少し意地悪をしてやるつもりが不意にこう言っちまった。
「えっ!?」
「付き合いたいんだろ、いいぜ」
 これは言った俺が驚いちまった。こんなことを言うつもりはなかった。
「本当、それって」
「あ、ああ」
 こうなっちまったらもう収まりがつかなかった。俺は成り行きのまま頷いた。
「いいぜ。これから宜しくな」
「うん。それじゃあ」
 そして横にきて手を繋いできた。
「今度。私のお家に来て。そして色々とお話しよう」
「ああ。そして俺の家にも来な。まあキスから先は流石にま
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