暁 〜小説投稿サイト〜
惚れたが負け
惚れたが負け
[4/8]

[1] [9] 最後 最初
だろ。通学路が一緒だからって」
「それはそうだけど」
「仕方無く付き合ってやってるんだよ。大体何でそもそも」
 何か言っているうちに嫌になってきた。口をつぐんだ。
「・・・・・・まあいいさ」
「いいの」
「勘弁してやるよ。同じ図書委員のよしみでな」
「有り難う」
「だから礼なんていらねえって言ってるだろ。いちいち言わせるなよ」
「うん」
「わかりゃあいいんだよ。ったくよお」
 何かイライラするがそれがどういうわけかすぐ消える。不思議な気分だった。何か言い聞かせている俺の方がガキに思えてきた。どう見てもこいつの方がガキ臭いってのに。
 何だかんだ言っているうちにバス停に着いた。どういうわけかここまで来るのが滅茶苦茶早い。気付いたらもういる位だ。
「それじゃ」
「ああ」
 何かバスはいつもあいつの方が早く来ているような気がする。昨日もそうだったし今日もだ。時間帯がそうなだけだがそれがかえって不思議に思えた。
「また明日ね」
「仕方ねえな」
 昨日と同じだがこう言ってやった。
「えっ」
「聞こえなかったのかよ、明日も一緒にいてやるよ」
 俺はわざと憎々しげな顔を作ってこう言ってやった。だが意外なことにこいつは嬉しそうな顔をしやがった。
「有り難う」
「おい、何度も言うけど礼なんていいって言ってるだろ」
 またイライラしてきた。
「通学路が同じなんだからな。いいな」
「うん」
「早く行けよ。もう出ちますぞ」
「それじゃあまた明日」
「またな」
 そしてあいつはバスに乗って家に帰って行った。それを見届けているとやっぱりイライラが消えていた。どうにも不思議な気持ちだった。
 次の日は別に委員の仕事はなかったが約束だったので一緒に帰ってやった。その次の日もだ。気が付けばもう一週間も一緒に帰っている。何かクラスでも噂になってきた。
「なあ御前と平田って」
「何でもねえよ」
 一言で終わらせてやった。余計な詮索なんぞ糞くらえだ。別に嫌いでも何でもない。ただ一緒にいてやるだけだ。そうだ、嫌いでも何でもないんだ、こんなチビ。俺は自分にそう言い聞かせていた。
 うざったくなってきたがそれでも一緒にいてやった。見れば胸も大きくないしそこそこ可愛いだけだ。まあ可愛いだけでもいいが何か割に合わねえと思ってはいた。だがそれは心の中にしまってボディガードを続けてやった。
「あの」
「何でしょうか、お姫様」 
 十日位経ってからふと平田が声をかけてきたので俺はおどけてこう応えた。
「私めに何か御用でも」
「ええと」
 俺にこう言われて戸惑っているように見えた。今から考えるとそれも怪しいものだが。もっともこんなことを言うとこいつの発言
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ