惚れたが負け
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っても俺は知らないぜ。置いていくからな」
「そんな、酷い」
「酷いって何がだよ」
俺はその言葉を待っていた。こう言ってやった。
「俺はたまたま通学路が一緒なだけだぜ。それで並んで歩いているだけなんだぜ」
「けど」
「けどもそんなもねえだろ。怖かったら前に歩けよ」
「うう」
「俺もたまたま一緒の速さで歩いてやるからよ」
その言葉を口にした時あれっ、と思った。
「有り難う」
それを聞くと急に元気になった。
「じゃあ歩くね。何だかんだ言って心配してくれてるんだ」
「いや、おい」
すぐに言い返そうとしたが言葉が出ない。
「じゃあ行こう。一緒にね」
「あ、ああ」
何か不愉快だった。まずった。おかげでこいつのペースに巻き込まれちまった。それからは静かに帰り道を歩いた。そしてバス停まで辿り着いた。
「それじゃ」
バスはあいつが乗る方が先に来た。そのバスに乗りながら声をかけてきた。
「ああ」
俺はまた何気なしに声をかけた。本当に素っ気なく言ってやった。そこで付け込んだのか不意にこう言ってきた。
「明日もお願いね」
「ああ」
今度も何気無く言っちまった。言ってから気付いた。
「げっ」
「それじゃあね」
平田はにこりと笑ってバスに乗り込んだ。後には苦い顔の俺だけが残った。迂闊に返事を返したのが失敗だった。だが口に出しちゃもうどうしようもなかった。苦い顔をしてもどうにもならないがするしかなかった。
こうして俺はその次の日もこいつと一緒に帰ることいなった。やっぱり面白くない。
歩いていて何か釈然としないのだ。何で俺がこいつと一緒に帰らなくちゃいけないのか。大体暗くなったって言ってもこんな人通りの多い場所で襲うような馬鹿なんていない。いるとしたら頭のおかしい通り魔位だ。もっともとろいこいつだから通り魔なんて出たら逃げられそうにもないが。そんなことをウダウダと考えながら並んで歩いていた。
「どうだ、ボディガード付きで歩く気分は」
「どうって」
平田は俺に言われると顔を俺に向けて上げてきた。
「嬉しいだろ。まあお世辞にも強いボディガードとは言えないけどな」
「・・・・・・うん」
平田はそれを聞くと俯いて答えた。
「何だかんだ言って一緒にいてくれるし」
「いてくれって言ったのは御前じゃねえか」
「そうだったっけ」
「そうだったっけって誤魔化すんじゃねえよ。大体な」
俺はさらに言ってやった。
「そんな態度だからいつもクラスでポツンとしてるんだろ。まあそれは俺も言えた義理じゃねえけれどよ」
「心配してくれてるんだ」
「馬鹿言え」
吐き捨てるように言い返してやった。
「御前が頼み込んだから
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