惚れたが負け
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たが予想していたから別に不愉快でも何でもなかった。それに心の中で頷いて黒板の図書委員の男子のところに俺の名前が書かれるのを見た。これで俺とこいつが図書委員になった。
「ねえ桶谷君」
暇になったところで声をかけてきた。桶谷っていうのが俺の名字だ。どうでもいいことだが下の名前は淳博という。本当にどうでもいいことだ。親にとっちゃかなり考えてつけた名前らしいが。
「何だよ」
俺はそれを受けて顔を平田に向けた。
「もうすぐ終わりだけど一緒に帰らない?」
「へっ!?」
俺はそれを聞いて怪訝そうな顔を作った。
「今何て言ったよ」
「だから一緒に帰ろうって」
平田はまた言った。
「何でだよ」
「私と桶谷君ってバス停までの通学路一緒じゃない」
「ああ」
「最近変な人がうろうろしてるっていうし。女の子が一人で帰ったらいけないって先生も行ってたでしょ」
「そうだったかな」
そんなこと言っていたかどうか覚えちゃいない。言っていなかったような気がする。もしかすると言っていたかもしれない。こんなことは中学校に入れば幾らでも言われることだ。いちいち覚えてもいられない位だ。
「そうよ。だからね」
「ボディガードして欲しいってわけだな」
「うん。駄目かな」
「ちぇっ」
俺は舌打ちした。だが特に断る理由もない。家に帰っても精々音楽を聴きながら勉強でもするかゲームをするかだ。そういえば丁度ゲームもクリアしたし買いたいCDもない。何か家に帰っても暇だ。そう思うと時間潰しにもならないがこいつと一緒にいてやるのも悪くはないと思った。
「仕方ねえな、お嬢さんは」
「有り難う」
「何で礼なんか言うんだよ。通学路が一緒なだけだろ」
俺はこう言い返した。
「ついでだよ。ついでだからな」
「うん」
わかってるんだかないんだか。頷いてきやがった。何か疑うことを全然知らないような顔だった。本当にいいとこのお嬢さんは違うと思った。
「じゃあ一緒に帰ろう」
「ああ」
顔を少し背けて肘をつきながら応えた。わざと面白くなさそうな顔と声で言ってやった。
こんなわけで俺と平田は一緒に帰ることになった。しかし何か面白くない。悪態を言って意地悪をしてやることにした。
「何か後ろから変なのが来るぜ」
「えっ」
それを聞いて急に怯える顔になりやがった。
「それ・・・・・・本当?」
「じゃあ見てみろよ」
心の中でニヤニヤ笑いながら言った。
「そんで足がすくんでも知らねえぞ」
「そんな、嘘でしょ」
「だからそれは自分で確かめてみろよ」
俺は両手を頭の後ろで組んで前を見ながら言葉を続けた。どうせ見れないのはわかっていた。
「けどそれで動けなくな
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