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ジオン独立戦争記〜名もなき兵士たちの転戦記
1.エルネスト・ルツ中佐編
第1話:開戦前夜
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終えると、ルツは床を蹴って再び格納庫の中を漂い、演習の反省会に
参加するべくパイロットの待機室へと向かう。
待機室に入ると、すでに彼以外のパイロットは集合していた。
ただ、反省会はまだ始まっていないようで、席に座って近くの者と雑談を
交わすものも居れば、部屋の隅で壁にもたれて立っているものもいて
雑然とした雰囲気を作り出していた。

ルツは縦3列、横3列の計9脚並んだ椅子のうち、いつも座っている前列右側の
椅子に腰をおろして目を閉じた。
待機室の椅子は特に席順が決まっているわけではないものの、概ね誰がどこに
座るかはなんとなく決まっている。
だいたいは、前列から階級の高い者が座るパターンが多いものの、
艦によっては例外もある。要はまちまちだ。

ルツが部屋に入ってからしばらくして、隊長のメンヒ大尉が入室してくると
好き好きにくつろいでいたパイロット達がそれぞれの席の前で直立不動の
姿勢をとる。

「楽にしていい」

部屋の正面に立ったメンヒが号令をかけると、全員が一斉に椅子に座る。

「ご苦労だった。 早速だが本日の訓練の反省会を行う」

毎度その言葉で始まる反省会は、まずメンヒによる訓練内容と目的の再確認と
訓練経過の紹介、各小隊に対する講評、各小隊長による反省コメントと続き、
最後に全員参加の戦訓検討会で締めくくられる。

短くても、1時間ほどはかかるミーティングである。

ルツ自身は小隊長であるため毎度毎度反省コメントを考えるのが面倒だとは
感じていたものの、最後に行われる戦訓検討会については楽しみにしていた。
この検討会の目的がボトムアップ形式による現行戦術の問題点洗い出しと
新戦術の構築であるため、立場上、彼自身はあまり積極的に発言することはない。
しかしながら、毎回交わされる熱い議論に彼は楽しみすら覚えていた。

今回も議論が白熱し、1時間の予定が倍の2時間ほどかかってしまったものの
自分たちの戦術の問題点を見つけられたことに対する達成感がパイロット達を
笑顔にしていた。

メンヒによる解散の号令により各自がばらばらに散って行くなか、
ルツは空腹を覚えて時計を見た。時間はちょうど夕食時である。

(晩飯にするか・・・。いや、この時間だと整備の連中がちょうど休憩に入るから
 食堂が混むな。 30分後にするか)

ルツは空腹を満たすのを先延ばしにして、自室に戻ることにした。
待機室を出て自室のある居住区画へと向かう。
自室の扉を開けるとさして広くもない部屋がルツを出迎えた。
ベッドと机がひとつずつ、あとはロッカーとチェストでほぼいっぱいになる程度だ。
だが、個室が与えられるだけルツは幸せ者である。

ムサイ級の居住区画はさほど広いものではない。

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