第四十二話
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座った。
「なぁ、佳杜」
「何ですか?もう歌いませんよ、一回きりです」
「お前、和子と何かあったの?」
先日の反省など生かさずに、権城が単刀直入に尋ねた。しかし、また単刀直入な物の言い方をしたのには一応理由があって、冷たいが正直にモノを言う佳杜ならば、誤魔化されはしないだろうという計算に基づいていた。
「……まぁ、何も無かったと言えば無かったですが、あったと言えばありますね」
「どういう事だよ、それ」
権城が更に突っ込むと、佳杜は含みを持たせた笑みを見せた。
「良いでしょう。どうせ、その話が聞きたくてこの部屋に居座ったのでしょうし、思い当たりを話してみましょうか。」
佳杜は淡々と語り始めた。
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佳杜と和子、そして姿は3人で良く遊んでいた。幼馴染の関係だった。
佳杜も和子も、二人とも歌うのが好き。
将来は2人でアイドルになると、そんな事も言っていた。おたまなんかをマイクに見たててポーズを決める2人の写真が残っている。
その2人の間に居たのが姿。姿は幼少期からあのパーフェクト人間ぶりを発揮していたらしい。佳杜も和子も、いつしか姿に惹かれていた。が、姿を奪い合うような事は無かった。あくまでも3人で。3人で居る時間が心地よかった。
その3人の関係に亀裂が入ったのは、幼少期の姿の怪我からだ。今でも右肩に後遺症が残った大怪我だったらしいが、そこで、佳杜は和子との差を、それまでに無いほどに強く感じた。絶対安静の姿に対して、佳杜は面会が許されなかったが、和子は許された。その理由は、和子が姿の許嫁だったから。姿と和子が親の決めた婚約者同士の関係で繋がっているというのはそれまでも知っていたが、幼い佳杜には、この時初めて、自分が立ち入れない領分というものが実感された。自分ではどうにもならない事がある、それを初めて知った。
それ以降、佳杜は和子と姿から離れていった。その2人と一緒に居ても、自分には越えられない壁があると思ったから。
「……恐らく、和子も私が何故離れていったのか、薄々感づいているのでしょうね。……私が何をしたって得られない関係を、和子は既に与えられている。その事に、和子は負い目があるんじゃないですか?明らかに私に遠慮していますからね。」
「……分かってんだったらさぁ……何か声かけてやれよ、いつも怖い顔してないでさぁ……」
佳杜は権城をキッと睨んだ。
「……実を言うと、私自身、和子が羨ましいと思う所があります。あの2人から離れたのは、私1人だけ取り残されるのが……いや……姿くんが自分のモノにならないのに、その傍に居るのは辛いから」
佳杜はその目つきの鋭さの割に語り口は穏やかだった。が、権城は息を呑む。言い方を変えてはいるが、要するに、今
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