第七章
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を語ってきた。
「ずっと静岡にいまして」
「静岡にですか」
「生まれはそこでした」
正直に語っていた。
「そして。兵学校で過ごして」
「江田島でしたよね」
「はい」
言わずと知れた海軍兵学校である。海軍はここで若き士官候補生達を育てていたのである。その場所は厳格さと共によく知られていた。
「あそこです」
「そうですか。では横須賀は」
「実習や遠洋航海で来たことはあります」
このことは言った。
「ですが長い間いたことは」
「今がはじめてですか」
「ですからこの街のことはまだよくは知りません」
「それでしたら」
祥子はそれを奇異抵当に対して言ってきた。
「あのですね」
「ええ」
「宜しければですけれど」
慎みを以って彼に述べてきた。
「お時間がある時に。案内させて宜しいですか」
「この街をですか」
「よく知られたいですよね」
伊藤の顔を見てきての言葉であった。
「この街のことを。そうですよね」
「ええ、それは」
知りたくない筈もなかった。今いるこの街のことをよりよく知りたいと思うのは当然のことだった。それは彼も同じだったのである。
「その通りですが」
「では。それで宜しいですか?」
伊藤の顔を見上げて彼に言うのだった。
「私が、案内させて頂いても」
「貴女がですか」
「そうです」
また言ってきた。
「御嫌ですか?それは」
「いえ」
祥子のその言葉には首を横に振るのだった。
「願ってもない御言葉です」
「それでは」
「はい。御願いします」
自分からも願ってきた。
「それで。是非共」
「ではお時間がある時に」
「待ち合わせ場所は」
「休みの日にはいつも家にいますので」
「お屋敷にですね」
祥子に対して問うた。
「そこですね」
「はい、そうです」
祥子の返事は伊藤の願っていたものだった。そのうえさらに言うのだった。
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