第三章
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「そうでしたか」
「腕はかなりだぞ」
そのステーキを切りながら語る。
「そうだろう?このステーキも」
「ええ」
「それにこの店はステーキだけではない」
「といいますと」
「パンは食べたか?」
今度問うたのはパンについてだった。
「このパンは。どうだ?」
「むむっ、そういえば」
「この味は」
「いいだろう。これも英吉利風だ」
「実に本格的ですな」
「パンまで」
「そしてワインは仏蘭西だ」
酒はそれだという。
「英吉利にはワインがないからな」
「しかし仏蘭西のものですか」
「ワインまで」
「何もかも本格的というわけだ。本格が一番だな」
「はい、まさしく」
「何もかも本物でなければ」
士官達はまた艦長の言葉に相槌を打つ。やはりどうしても追従に見える部分がある。だがそれでも彼等は楽しく飲み食いをしていた。
「今日は楽しくやろう」
「はい」
士官達はあらためて艦長の言葉に頷いた。艦長はここで士官達の末席にいる伊藤に顔を向けた。そのうえで彼に声をかけてきた。
「伊藤少尉」
「はい」
「楽しくやっているか?」
「はい、それは」
礼儀正しく艦長に言葉を返した。
「お気遣い有り難うございます」
「もうこの船に来てどれ位だ?」
「三ヶ月でしょうか」
少し考えてからこう答えた。実際に頭の中で着任した年月を勘定もした。
「それ位になります」
「もう馴れたか?」
「はい」
やはり丁寧に艦長の問いに答えた。
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