少女は龍の背に乗り高みに上る
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のだろう。
「分かってるくせに、可愛いやつ」
彼女はねねを子ども扱いしない。ねねをねねとして、頭の出来がどのくらいかを明確に読み取って相応の扱いをしていた。同時に、才に胡坐をかくなとも含めているのだ。
故にねねは彼女を信頼出来る。恋の為に全てを費やしてきた事を、彼女は月のように読み取って、一人の軍師として扱ってくれるから。
同時に、楽しげに笑う彼女は、娘を見るようにもねねの事を見ていた。そんな目で見られては、からかう事も出来ない。
「とりあえずお前には憎しみを飼いならす練習として一つ我慢して貰わなくちゃならない。十日前後くらいで曹操のとこに土産を持って行くからな。藍々は使えないからねねだ。鳳雛と話をさせるわけにはいかないんだ」
全身に鳥肌が立つ。心の内から憎しみが溢れ出る。無意識の内に噛みしめた歯が、ギリギリと音を立てていた。
「ねね達に、あの裏切りモノと、恋殿の心にヒビを入れた男に会えと……そう言うのですか」
脳髄から溢れる怨嗟は留まる事を知らず、目の前で痛ましい瞳を向ける彼女は関係ないのに、睨みつけなければ気が狂いそうだった。
ねねは大きな憎しみから、二人を殺したくて仕方ない。
恋は……きっと二人と出会った時だけ“人”に戻る。憎しみという、最も度し難い感情を思い出して。
友を殺した男は、何故か恋を恐怖に落とした。だから彼女の心にはヒビが入っていた。
恋が壊れた最後の要因は……月と詠の死亡報告と……裏切り者が出たこと。
どうしてあの神速が、皆でまた集まろうと言ったのに、逃げ切れずに捕まり、そして……友の忠義の姿に涙していたはずなのに、敵に降ったのか。
友への想いはその程度であったのか。主への忠はそんな安っぽいモノであったのか。ねね達はずっと……ずっと信じていたのに。
だから恋は壊れた。悲哀と憎悪と猜疑心から……全ての感情と意思を凍結させた。
賊を屠って根城を手に入れた時、彼女は一人で敵を殲滅した。人形のように戦うその姿に、ねねも、呂布隊の者達も涙を零した。
そして呂布隊は、ねねから解散の言を告げられていた。
反対は出来なかった。呂布隊にとってねねの言は絶対。さらには最善が何かを一番理解していたのはねねなのだから。
いくら無双の勇者であろうと、恋は一人の少女。心を取り戻すのに必要なのは……乱世を駆ける呂布隊では無く、平穏な日常であったのだ。兵士達は涙を呑んで、二人の元を去った。いつか、いつか主が戻った時に、また戦わせてくれと願いを預けて。
故に、呂布隊はもう居ない。
共に戦う仲間がいない孤独は、より一層ねねの心を憎しみに駆り立てていた。一人で主を支え続けるねねは……憎しみに縋って生きていた。
そして恋が“人”に戻って二人を殺せば、友を殺したそ
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