EPISODE42 涙
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「どういうことだよ千冬姉!」
廊下に響くは一夏の声だ。怒り心頭といった感じで姉である千冬に詰め寄る。
「学園に戻ってみれば荒れ放題、シャルロットは撃たれて意識不明!おまけにライは引きこもって出てこない・・・・何でこんなことになってんだ!?」
「外部との連絡が完全に遮断されていた。おまけにこれは特秘事項だ。おまえには言えん」
突き放すような態度がさらに一夏の態度を煽る。いくら姉とはいえ、許せないことと許せることがあると反論するも取り付く島もなく踵を返す千冬。
「逃げるのかよ千冬姉!」
「・・・・織斑先生だ」
それ以降は何も言わずにその場を去る千冬。今追いかけて問い詰めれば多少は白状するかもしれないが、それは多分ないだろうと長年の付き合いからわかる。こうなった姉は意地でも本質を話そうとはしないので一夏はやりきれない気持ちを壁を殴るという行動で晴らすこととする。その後ろでどうしていいかわからない箒は自分たちの後ろで静かに佇むレモンイエローの髪を持つ少女に目を向ける。自分と同じように、時にはそれ以上に凛としていて、気丈に振る舞う彼女だが今はなにも言わず閉ざされたドアの向こうを見たまま動かないでいる。前髪と陽の当たりで影っているためその表情までを確認することまでには至らないが、それでも彼女が憤りと無力感に悩んでいることだけは遠目でもわかることがあった。静かに握った拳がワナワナと震え、歯を噛みしめているのかギリ、という音が僅かに聞こえる。
「・・・・なあモニカ。ここで何があったんだよ」
「・・・・」
「…そうか、おまえも何も言わねーのか」
口悪くなる気持ちもわかる。だが、それはないだろうと一夏を咎める。それに「わかってる」と返す一夏。それにわかってないだろうと返しそうになるのを堪え言葉を飲み込んだ。ここで言い争うのはよろしくない。だから、
「モニカ。その・・・・話せるようになったら話してほしい。私も一夏もそれまではなにも訊かない。…それじゃ」
一夏を連れ、部屋へと戻る箒。二人が去ったことを気配で悟るとモニカは一夏同様――――いや、それ以上の力で壁を殴る。
「何が護衛だ。何が私が守るだ。肝心な時に何もできないどころか傍にいることすらできないで・・・・!」
完全な失態だ。何が間違っていたかなんてわかっている。あの二人にすべてを打ち明けてさえいればきっと結果も変わっていただろう。学園もさほど被害はなかったとはいえそれなりの施設への被害はある。さらに一番の失態は愛する主人(妹)を危険にさらしたことだ。これは何があっても避けなければならなかった事態。わかっていた、来るという確信があったにも関わらずこのざまだ。
なんて、無様だろうか。これで
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ