EPISODE36 喪失
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ドに泣き崩れる。愛おしい人の中にはもう自分はいない。名前を呼んでもらうことも、自分のアピールに戸惑う顔も、もう見ることはないのだと泣く。立場もなにもかもを忘れて一人の哀れな少年を想いセシリアは泣いた。
あと、どれくらいになるだろうか。
あと、どれくらい失うのだろうか。
あと、どれくらいの後悔をすれば――――・・・・。めぐっても出ない答えをC.C.はシャットアウトしてテラスで未だに月を見上げている主を見る。
皮肉なものだな。祈りは悲劇を呼び寄せ、願い手にしたもの他を傷つけることしか知らぬ。望んで掴んだ希望は一瞬にして絶望へと化けた。それは周囲の存在だけではなく自分自身すらも飲み込んでいくそれはまるで――――
[ギアスの呪い・・・・いや、もっと性質が悪いな。これは]
孤独になるだけはらまだいい。他を傷つけずに済むから。
孤独になるだけならまだいい。自分だけが背負えばすむことだから。
孤独になるだけなら・・・・・どんなに幸せか。C.C.はクラブのデータを展開する。ひろげたホロウィンドウには今朝急に開いたブラックボックスの中身を見る。まるでパンドラの箱だと呟きそれを睨みつけて叩き割る。プログラム体だからなんということはない。これを殴り割ったからと言って全てが元に戻るわけでも、このシステムがなくなるわけでもない。だから――――
[そろそろ寝たらどうだ?明日発つんだろ]
「C.C.、起きてたのか?」
[おまえが窓を開けているから寒くて寝れないんだ。これでもそういう無駄な感覚はあるんでな]
「難儀だな」
いつも通りにしよう。せめて、自分だけは。そう努めて悪態をつく。傲慢に振る舞う。それが魔女というものだと言いきかせて。
「おやすみ」
[ああ。おやすみ・・・・]
夢のなかでは、せめて穏やかに。そんならしくない願いを込めて自身もスリープモードに入る。プログラムの癖にこんなヘンなところだけ人間みたいに作るとはあのバカ兎もそれほど天才ということか。
・・・・いや、もはや天災、災悪だなと自らを生み出した女のことをそう位置づけて徹底的に怒りを込める。
篠ノ之束。この借りは必ず返す。そう強く誓いながら。
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