EPISODE31 蒼と白
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るように歌い、踊った。翼が舞った軌跡から落ちるのは破壊の羽。以前よりもその威力と範囲を広げ彼らを襲う。
必死に機体を捌くライ。聞こえてくる爆音と悲鳴に心がざわつく。脳裏によぎるのは、見たことある光景。
『させるかァァァァァァァ!!!』
回避をやめライが取った行動は反撃。翼を、両の銃を、すべてを空に向けて放つ。弾幕を張り、なんとかして攻撃を防ごうとするも一枚相手が上手だった。撃ち漏らしが、広すぎる範囲が味方の機体のダメージを増やしていく。上がってくる報告を聞きながら、ライは唇を噛む。
護れない
繰り返す
同じ過ちを
何度も
何度も
・・・・認めない
こんな結末を、認めない。
だから
どんな代償を払っても構わない。せめて、彼女達だけは・・・・!
そう願うかのようなライの想いに、天からの叫びが答える。
「仲間は…やらせねえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!」
ドン、という音が形容するような衝撃が空中に拡散する。猛烈な突撃を頭上から受けたかのように福音が海面に落下した。
見上げれば、白の翼をより雄々しくたたえる騎士の姿。左腕の形だけでなく全体的なフォルムを変えて空に坐すその姿は海面から顔を少し出し始めた太陽を反射して光る。黒の髪に赤銅の瞳が同じ目線まで降りてくる。惨状は・・・・そこまで酷くはない。皆が皆、機体を展開したまま空中にいるのを見て彼は間に合ったと安堵の笑顔を湛える。
溜まらず少女が飛び出した。
「一夏、一夏ぁ!」
飛びついてきた少女を受け止め少年は心からの笑みを浮かべる。涙で歪む顔を苦笑まじりに眺め、何か物足りないと粒子化していたものを取り出す。
今宵は7月7日。織斑一夏にとっては特別な日でもあったからだ。
「遅くなって悪い。お詫びってわけじゃないけど・・・・これ」
「・・・・リボン?」
「誕生日おめでとう、箒。こんなときで悪いけどさ」
ばつが悪いと笑う一夏に箒は満面の笑みで返したあと、ハッとなって頬を機体よりも明るい紅に染めてそっぽを向く。素直じゃないなといつもの光景を見せてくれる幼馴染から身を離すと、その後ろにいる蒼いもう一人の騎士に目を向ける。
「・・・・行けるか?」
訊う言葉はただ一言。でも、返す言葉はいらない。少年の言葉に彼もまた頷いて返す。
まだ、戦える。まだ飛べる。この空へと、翼を広げて二人の騎士が吠えた。海面から出でる天使を思わせる姿を、真っ向から見据えて。
銀と蒼と白が、明けてゆく空を駆けた。
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