EPISODE30 ライ−liar−
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られた過去と穢れた身。淡く漂うのはいつか過ごしたはずの温かな想い出。色褪せ劣化していくそれらに対し見たくないものだけが鮮明に浮かび上がってくる。手を見れば赤い生命の液体。見下ろした足元には無数の人だった抜け殻たち。命の絶たれたそれは今自分の足元に山のように積み上げられ自分を見上げるまだ命のある肉体達は歓喜の声をあげている。
壊せ。
――――違う
奪い取れ。
――――ちがう
全てを・・・・。
――――チガウ!!
夢中でもがいた手は水面から顔を出す。やがて躰を起こして目を開く。荒れる息を整えながらゆっくりと思考を整理し自分を取り巻く環境を見渡す。畳の匂いに混じってシャンプーのいい匂いが鼻を通り肺へと流れ込む。傍らを見れば少しはだけた浴衣からその豊満すぎる胸元を覗かせながら幸せそうに眠っている山田真耶の姿を見て、安堵の息をつくとともに“まだこの世界にいる”と安心感が躰を満たしていく。傍らに眠る少女のような女性にはだけていた掛布団をそっとかける。なんだか微笑ましい彼女の寝顔をしばらく眺めたあと眠れそうにないと立ち上がる。
だが、足に力が入らない――――いや、足だけではない。視界があらぬ方向に歪んでいたのも大きな要因だ。バタン、と何ともありきたりな音とともに躰がついに平衡感覚を失い倒れる。まったく理解できたない状況にもう一度立ち上がろうと力を入れてみるもうまく立つことができない。壁伝いになんとか躰を起こすも歪んだ視界は元には戻らない。そしてまたバタンと音を立てて今度は膝から崩れ落ちた。
「なんの音ですか・・・・って、ライ君!?」
起こしてしまったか。もう少し寝かせてあげたかったなとこちらを覗き込んでくる真耶の不安そうな顔をおぼろげに見ながらもう一度立ち上がろうとして畳に伏せる。遠くなる意識と声に手を伸ばす。
また、あの闇に沈むのか・・・・?
伸ばした手が掴まれたのか、はたまたそうでないのか。それすらもわからないままライは手を伸ばす。縋るように、求めるように。
それから、意識は途切れた。
◇
簡単に言い切ってしまえば疲労。これまでに度重なる神経の使い過ぎに肉体が悲鳴をあげたらしい。傍らに座るシャルロットがそう伝えてくれたのを聞いてそうかと一言つぶやいた。それに不服そうに頬を膨らますかわいらしい少女を不思議そうに見返すといつもそうだねとそっぽを向いていかにも納得のいかない不機嫌な態度を取る。
「ライってさ、もっと周りを頼りにするべきだよ」
「頼りにしている。僕一人でなんとかできるとは思ってないさ」
「そうじゃないよ。抱え込んでるものがあるでしょってこと。悩んでるなら相談してくれればいいのに、いつもそうやって
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