第二話 大角少佐!!柔の道の奥義を見よ!その四
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「只の暴力に過ぎない」
「武道じゃないんですね」
「柔道でもないんですね」
「そうだ、心のない力は暴力だ」
まさにそれに過ぎないというのだ。
「だからだ、柔道の柔よく剛を制すとはだ」
「心ですか」
「そうした意味なんですね」
「その通り」
鈴木はあらためて言い切った。
「どの様な辛いこと、困難そして暴力に対してもだ」
「向かいですか」
「そして打ち勝つものですか」
「相手が剛で来てもだ」
力押し、若しくはこれ以上はないと思われる困難を前にしてもというのだ。
「それを鍛錬した心の技で向かい制する」
「それが柔道なんですね」
「それなんですね」
「柔道は心ですか」
「それを鍛えるものでもあるからこそ」
「柔道のこの言葉は体格のことではないのだ」
心のことだというのだ。
「ではいいな」
「はい、僕達もですね」
「心も鍛えて」
「そして困難にも向かい勝つ」
「そうあるべきなんですね」
「暴力にもだ」
鈴木は暴力を否定していた、明らかに。
「人は圧倒的な暴力の前には萎縮してしまい何も出来なくなる」
「そうなるんですか?」
子供達はまだ知らなかった、暴力の持つそうした恐ろしさを。まだ幼くそうしたことを知る経験を経ていないのだ。
「殴られたり蹴られたりしたら」
「そうなるんですか」
「そうだ、執拗に激しく殴られ蹴られ罵られればだ」
そうした暴力がだ、圧倒的な暴力だというのだ。
「心を萎縮させてもらう、しかしだ」
「それでもなんですね」
「柔道で心身を鍛えれば」
「それで」
「その暴力にも勝てる様になる」
圧倒的な暴力にもというのだ。
「暴力に勝つのは真の力だ」
「柔道が真の力なんですね」
「つまりは」
「柔道、武道は真の力を養うものだ」
その心まで鍛えてである。
「だからこそだ」
「僕達も柔道を通じて」
「自分を鍛えるべきですね」
「そして先生みたいに」
「先生みたいな立派な大人になるべきなんですね」
「私は尊敬せずともよい」
鈴木は子供達の自分を見ての憧れの声にはこう返した。
「それは君達のご両親や素晴らしい人に向けるものだ」
「じゃあ先生は素晴らしい人じゃないんですか?」
「私達はそう思うんですけれど」
「私は修行中の身だ」
あくまでだ、そうだというのだ。
「だからだ、尊敬されるに値しない」
「それでなんですか」
「そう仰るんですか」
「そうだ、私は尊敬されるに値しない者だ」
このことも毅然として言うのだった。
「だからいい、わかったな」
「はい、じゃあ」
「僕達お父さんやお母さんを尊敬します」
「そして立派な人を」
「私達がそうだと思った人を」
「そうしてくれ。では柔道をはじめよう」
あらためてという
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