第八十四話 リハーサルその十二
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「どう見てもね」
「だといいけれどさ。あたしも」
「まあとにかく。春になったら」
その時はというのだ。
「皆でお花見しよう」
「そうだな、皆でな」
「それで美味しいもの飲んで食べて」
「楽しむんだな」
「一年のはじまりにね」
そのはじまりを祝う意味でも、というのだ。
「そうしようね」
「ああ、それじゃあな」
美優は琴乃の言葉に頷いて答えた、そうしてだった。
五人はそれぞれの家に帰った、美優もまた。美優は家に帰るとだ、今はリビングでくつろいでいる母にこう尋ねた。
「あのさ、お花見の時だけれどさ」
「何か食べるのね」
「ああ、飲んでさ」
「それで何を作っていけばいいかっていうのね」
「母ちゃんは何がいいと思う?」
「お弁当よね」
このことをだ、母は娘に確認した。
「そうよね」
「ああ、お花見だからさ」
「だったらまずはね」
「まずは?」
「お握りでしょ」
母が最初に挙げたのはこれだった。
「やっぱりこれは外せないでしょ」
「ああ、お花見のお弁当でもな」
「お握りは絶対よ」
何といってもという口調での言葉だった。
「忘れたら駄目でしょ」
「サンドイッチは駄目かよ」
「サンドイッチはあってもいいけれど」
それでもというのだ。
「とにかくお握りはね」
「それはか」
「そう、絶対に忘れないの」
「それだけなんだな」
「いいわね。それでおかずはね」
お握りを絶対者として次に来るのはこちらだった。
「ソーセージとか卵焼きとか」
「オーソドックスでいいんだな」
「あと野菜の煮付けもいいわね」
「ほうれん草のお浸しとかもか?」
「それとプチトマトにね」
それにだった。
「デザートはオレンジとかよ」
「本当にオーソドックだな」
「オーソドックスでいいのよ」
それでだというのだ。
「お花見はね」
「運動会のお弁当みたいな感じでか」
「むしろ奇をてらったりすると」
お花見の弁当でそれをするとどうなるかというと。
「かえっておかしくなるのよ」
「そんなものか」
「そう、あとお酒もね」
それもだというのだ。
「普通でいいのよ」
「何か全部普通なんだな」
「だって。メインは何よ」
「お花見のかよ」
「そう。何なのよ」
「それはお花だろ」
言うまでもないといった口調でだ、美優は母に答えた。
「やっぱり」
「お花を見ながら飲んで食べて楽しむものよね」
「そうだよ、それはさ」
「だからなのよ」
「お弁当とかお酒はオーソドックスか」
「お花をどかす様なのじゃなくて」
母は娘に話していく。
「出来れば焼肉とか焼きそばもね」
「しないに限るか」
「そう、オーソドックスよ」
あくまで、というのだ。
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