第三十八話 カーテンフォール
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
収まった。
「おーととと」
掴んだは良いが、権城は打球の勢いに押されて尻餅をつく。それを見た大友は三塁へ。楠堂の打球はライトライナー。二死三塁に状況が変わる。
(……ツキがない)
楠堂は小さく舌打ちしてベンチに帰る。
権城は胸に手を当てて、乱れた呼吸を整えていた。
(あぶねぇー!今足が止まったから良かったものの、最初の勘に従って前進してたら絶対頭越されてたぞ!ラッキー……)
カキン!
「セカンド!」
楠堂の次の7番は、今日当たっていない。
キッチリセカンドゴロに打ち取ってゼロに凌ぐ。
制球力と精神力。キャプテン紗理奈が4回を無失点に抑え、遂に南十字学園の攻撃は最終回へ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「さぁ、最後の攻撃だよ」
9回の攻撃前の円陣で、紗理奈はこの回先頭のジャガーまでもを呼び寄せて語りかけた。
「二点差だ。みんな、次に次につないでいこう。みんなの力であと二点、いや三点とろうじゃないか。」
紗理奈はベンチ全員の顔を見た。
「勝とう!私はまだまだ、野球をしていたい!」
「「「おおぉーーっ!!」」」
ベンチ全員の大きな叫びで、9回の表が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーー
<8番キャッチャー山姿さん>
先頭はジャガー。今日は2安打を放っている。安打でなくとも良い。とにかく塁に出たい所だ。
(最後くらい、ピシャリと切ってとる!)
しかし、帝東エースの浦中も、この回が最終回とあってエンジン全開。ガンガン飛ばしていって、ジャガーを圧倒した。
「ストライクアウトォ!」
威力抜群のストレートの前にジャガーは三振。先頭が倒れてしまった。
<9番ショート合田くん>
そして続くのは、今日譲二以上に上がり目の無い不甲斐ない凡打を繰り返している9番の哲也。哲也は打席に向かう前に、何度も紗理奈を見た。
(ほ、本当に俺で良いのか?)
しかし、そんな哲也の視線に紗理奈は笑顔で頷くばかり。結局代打はなく、哲也がそのまま打席に入る。
(よし、こいつは安パイ……)
そう頭をよぎった大友は自分の顔をマスク越しにガンガン叩いて気持ちを入れ直す。
(何を考えてるんだ俺は!さっきもそんな事を考えて本田に打たれたんじゃないか!)
挙動不審な大友を見て、打席に立った哲也は少し安心した。この9回、帝東も平常心を失っている。ビビっているのは自分だけじゃない。
(あんた、ホント振り回してばっかりよねー)
打席に立った哲也の頭の中に、紅緒から言われた言葉が聞こえてくる。ずっと昔、小学生の頃、野球で遊ぶ事を覚えた頃に言われた言葉。
(でも、それだけ振られたら、それなりに
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ