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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十八話 繁栄と未来
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勲章の授与も事実なのでしょうか?」
「事実です」
トリューニヒトが答えるとバリードが俺に視線を向けた。厭な目付きをしている。獲物を見つけた蛇みたいな目だ。舌なめずりでもしそうな感じだ。心の卑しさって目に出るよな。気を付けないといけない。

「ヴァレンシュタイン諮問委員長にお尋ねしたい。政府閣僚の立場にある貴方が帝国から勲章を授与されるというのは如何なものか。いささか不見識とは思いませんか?」
面倒だなと思いながら答弁席に向かった。不見識だなんて言っているが要するにこいつは俺が勲章を貰うのが面白くないのだ。双頭鷲武勲章って帝国でも有名な勲章だからな。

「不見識とは思いません」
ムッとしてるな。なんで辞退しないんだ、そんなところか。
「帝国とは和平を結ぶとはいえ昨年までは戦争をしていたのですぞ。まして諮問委員長は亡命者です。帝国が委員長を懐柔しようとしているとは思われぬのですかな」
懐柔か、まあそういうところが有るのは事実だから否定は出来ない。

「なるほど、考えた事も有りませんでした」
「では考えていただきたい!」
そんな怒るなよ。余裕が無い男は嫌われるぞ。
「分かりました、考えましょう、少しお待ちください。……考えました、やはり勲章は有り難く拝受します」

議会に爆笑が起こった。トリューニヒトも腹を抱えて笑っている。うん、俺の方がキレが有るだろう。この勝負は俺の勝ちだな、トリューニヒト。カマキリが何か喚いているが笑い声で良く聞こえない。唇の動きからすると“馬鹿にしてるのか”、“ふざけるな”そんなところのようだ。ようやく分かったらしい、鈍い奴だ。

余計なお世話なんだよ。大体だ、外国人に勲章の授与なんて現実世界じゃ幾らでも有ったんだ。金ではなく名誉を与える。貰う方も与える方も後腐れなく楽なんだ。この世界は帝国と同盟が戦争しかしてないから無かっただけだ。これから和平が結ばれ協力体制が築かれればいずれは出てくる話だろう。詰まらない料簡で反対するんじゃない! ホルマリン漬けにして標本にするぞ。

笑いが収まるのを待って話し始めた。
「同盟と帝国は和平を結び協力体制を築きます。これは政治、経済、軍事等の政府間協力だけでは有りません。国境を開き民間においても交流を広げ学問、文学、芸術、医学など多岐の分野に亘って協力し合う事になるのです。当然ですがそれぞれの分野において多大な功績を上げる人間も出てくる。それらの人間に勲章を贈りその功績を讃えるのはおかしな事では有りません。むしろ積極的にそのようにすべきでしょう、それこそが両国間の交流をより密なものにする、より相互理解が進み和平が長続きする。そう私は考えています」

カマキリがモゴモゴ言っている。和平が長続きするという大義名分の前に効果的に反論できないらしい。
「それに人間
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