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トワノクウ
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第十三夜 昔覚ゆる小犬と小鳥(三)
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消える人の夢のようにな」

 夢のように――フレーズは恐怖を伴ってくうの胸に沈んだ。

「もっともこれは天狗や先々代の姫巫女の受け売りだ。鴇は『夢』などと口が裂けても言わなかった。――帝天は人柱だ。帝天は天人にしか務まらない。そうと知って逃げる鴇ではなかった。我らは彼岸人を、鴇を犠牲に生き延びていくしかない。私は」

 朽葉の顔が苦痛に歪むのを初めて見た。

「鴇さえいてくれれば、この世が滅びの運命を課されたままでもよかったのに……っ」

 朽葉は膝の上に拳を握って唇を噛みしめる。ああ、そういうことだったのか。いろんなピースが全てあるべき位置にはまった。

「好きだったんですか?」

 一拍置いて、朽葉の貌がボンッと真っ赤に染まった。

「好きだったんですか!? 好きだったんですね!? どこが好きだったんですか!? なれそめは!?」
「せ、迫るな襲いかかってくるな! こんな話が楽しいのか!」
「はいっっ!!」

 くうが大好きな人を他の人も好きだった。しかも特別な意味で好きだった。六合鴇時はそんなにも魅力的な男性だったということだ。ああ、こんなにもうれしいことはないとも!

「わわ分かった! 話す、話すからまずはどけ!」
「はいっ!」

 くうは急いで朽葉から離れてきちんと正座した。朽葉はほっとしたように、やたらと髪をいじる。

「まったく。そんなに正面きって鴇の話をしてきたのはお前が初めてだ」
「ごめんなさい……」
「あ、いや! 悪い意味ではないんだ! 尋ねてもらえて嬉しいんだ! 単にな、重苦しく終わってしまうからみんな敬遠していただけで、お前みたいに楽しそうに聞いてくれる者の存在は、うれしい」
「朽葉さん……」

 彼岸の鴇時はくうが初めて会ったときから独身を貫いている。大好きな家庭教師の先生を独り占めできるのはうれしかったが、かねがね疑問だった。
 あんな素敵な先生と、こんな魅力的な女性が恋仲だったのならば、鴇時にずっと女の影がなかったのも肯ける。

「鴇があまつきに来たのは六年前。紺が来てから二年後だった。お前のように鵺に襲われているところを私が助けた。情けなくてかっこわるい男のくせに、私が犬神憑きであることを侮辱されたときには影で侮辱した浪人どもに制裁を加えていたりしてな」

 好きな異性に体を張って庇われたことを語る朽葉は、乙女オーラ全開だ。

「奴はケンカはからっきしでな、私の役目は、鴇が信じる道を進めるように、鴇を害する全てから鴇を守る剣だった。うん、それでも、私が救われたほうがきっと多かった。人に好きだと言われるだけでこんなにも世界は色づくのだと、鴇が教えてくれた」

 そこまで語って朽葉は照れたのか、複雑な笑みを浮かべた。

「年甲斐もなくはしゃいでしま
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