第百七十四話 背水の陣その二
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「そうした相手じゃ、だからじゃ」
「ここに残りたい者は残れ」
「そう仰るのですな」
「そうじゃ」
まさにだ、その通りだというのだ。
「残りたくば残れ」
「この北ノ庄に」
「そうせよと」
「このことは罪に問われぬ」
決して、というのだ。
「残るも責、だからな」
「生きたければ生きよ」
「そうしてもよいと」
「そうじゃ、わしと共に川を渡る者はここに残れ」
柴田はまた言った。
「渡らぬ者は出よ、暫く待つぞ」
「ではその間に決めよと」
「どうするか」
「そうじゃ、わしは部屋を出た者については何も言わぬ」
無論信長もだ、そうするというのだ。
「一切な」
「・・・・・・ですか」
「何もですか」
「うむ」
こう言い切った、そしてだった。
実際にここで暫く待った、誰が部屋を出るのか。
柴田は目を閉じた、それを見て他の者もだった。
どれだけ経ったであろうか、やがてだった。
柴田は目を開けた、するとそこには。
皆がいた、柴田は彼等を見て笑顔で言った。
「一人も去らなかったか」
「ははは、戦は元より覚悟のうえのこと」
笑って言ったのは前田だった。
「それならです」
「相手が上杉謙信でもか」
「この前武田信玄と争ったではありませぬか」
謙信と並び称される彼とだというのだ。
「それならでござる」
「戦になろうともか」
「はい、思う存分戦い」
そして、というのだ。
「我等の戦ぶりを見せてやりましょうぞ」
「そう言うか」
「ははは、腕が鳴りまする」
あえて口を大きく開いて笑ってみせてだ、前田は柴田に言ってみせた。
「越後の龍、どんな強さなのか」
「言ったな、では川を渡るぞ」
「はい、共に」
「皆の心はわかった」
腕を組みだ、柴田は諸将に確かな声で言った。
「誰もが上杉と戦えるな」
「望むところです」
「殿が来られるまで戦ってみせましょうぞ」
「そのことはわかった、しかしこの城を守る者も必要じゃ」
そしてだ、この城から兵糧や武具を加賀まで運ぶ手配をする者が必要だというのだ。柴田はここでこのことを言うのだった。
「そうした者もな」
「では、ですか」
「皆が渡ることは出来ませぬか」
「うむ、この城には然るべき者を残す」
そうするとういうのだ。
「ここはな」
「ではその者は一体」
「どの者でしょうか」
「佐吉、桂松」
柴田が名を挙げたのは二人だった。
「よいか」
「はい、それがし達がですか」
「この城に残り」
「加賀までの兵糧や武具の手配を頼む」
それをだというのだ。
「そしてじゃ」
「はい、いざという時にですな」
「備えておけと」
「御主達に任せる」
石田と大谷、この二人にというのだ。
「他の者は全て川
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