トワノクウ
第十三夜 昔覚ゆる小犬と小鳥(二)
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を聞いているのか。だったら話が早くて助かる。鴇は」
「いいえ。そんなもんじゃないです」
くうはまるで犯罪の告白のような心持で告げた。
「六合鴇時さんは、くうの家庭教師の先生です」
今度は朽葉が仰天する番だったようだ。
朽葉は長いこと思案した末に一言。
「ありえない」
今度は父親のときのように聞き返されなかった。頭から否定された。くうはついむきになった。
「だって、ほんとにそうなんです。鴇先生はくうの先生です。中学受験のときに勉強を見てもらったんです」
くうは初等教育課程を通信教育ですませたが、母の勧めで中学校からは通学にしようということになった。中学の受験勉強をするときに家庭教師をしてくれたのが、紺の高校時代の同級生の鴇時だった。その時から鴇時とは家族ぐるみの付き合いだ。
「鴇はずっとあまつきに留まっているんだぞ。一度たりとて彼岸には帰らなかったんだ。このあまつきを守るために。それが彼岸にいるはずがなかろう!」
怒気をあらわにされて、くうは竦み上がった。朽葉ははっとして恥じ入るようにした。
「すまん。大人げなかった」
こわかった。いつも優しい朽葉だけに怒るとこんなにこわい。
でも、どうして怒られないといけないのか。くうは嘘をついていないのに。鴇時とはずっと一緒にいて、たくさんのことを知っているのに。
「擦り合わせてみよう」
くうは首を傾げた。
「お前の言う『鴇先生』と私の知る『鴇』が同一人物なのか、お互い知る限りのことを挙げてみよう。一致すれば、私達が同じ人物を語っているということになる」
くうは素直にうなずいた。
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