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トワノクウ
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第十三夜 昔覚ゆる小犬と小鳥(一)
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体、どうなってしまったのですか?」

 朽葉はしばらく自分の膝に目を落として、顔を上げた。

「――落ち着いて聞いてくれ」
「もう落ち着いてます。お願いします」
「そ、そうか」

 朽葉は面食らったが、すぐに安心して相好を崩した。

「あのとき、お前は藤袴に負わされた怪我で心肺停止だった」

 心臓が停まるまで殴るくらい薫はくうが憎かったのか。自分が死んだことよりそちらのほうがショックだった。

「なぜ蘇生できたか分かるか?」
「お医者さんのご尽力、とか」

 先ほど診察に来た、にこにこした華奢な医者を思い出す。

「藍鼠なら何もしてないぞ。お前は自分で死の淵から蘇ったんだ。私達が駆けつけた時にはすでに、お前の傷はもう治り始めていた」
「妖憑きの傷は勝手に治るものなのですか?」

 朽葉は首を振る。

「お前に憑いたものにもよるが、むしろこれは呪いではないかと緋褪様はおっしゃった」

 くうは自分の腹を腕で思いきり押さえた。この腹の中に、くうを死なせまいとするものが胎動している。

不死(しなず)の呪い。緋褪様ご自身や、()()()()()()にかかっていたのと同じ、決して死ねない呪いではないか、と」
「死ねない、呪い……」

 くうは薫に殺されたときを思い出す。
 あれを体感してなお逃げることは許されないのならば、確かにそれは呪い以外にありえない。

 俯いて考え込んでいたくうに、今度は朽葉から質問が来た。

「なあ、くう。ずっとお前に聞こう聞こうと思っていて、聞きそびれていたことがあるんだ」
「何ですか?」
「お前の縁者に篠ノ女紺という男がいないか?」
「お父さんをご存じなんですか」

 そこで朽葉は目をぱちぱちと瞬く。

「………………父親?」
「はい。篠ノ女紺は私の父の名前です」
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