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雲は遠くて
39章 女性に人気の松下トリオ (1)
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っているから、また、偉いのよ。確かにお金が
あっても、心が(すざ)ぶ人もいるわ。人としての道を踏み(はず)したり、
人生の重大な失敗のきっ かけが、お金とかの欲望に始まることは多いんだから。
弁護士のお仕事をやってみて、つくづく、心に芽生(めば)える欲望ってこわいと思う」

「お金より、何が大切かって、やっぱり愛じゃないかと思うもの。美咲ちゃん」

「そうよね、美樹ちゃん。愛が1番だわよね。陽斗(はると)君もうまくいっている
んでしょ!そうそう、今日は陽斗くんのコンサートがあるんじゃない!美樹は
真央ちゃんとふたりで行くんでしょう?」

「うん。今日のコンサートは、客席が限定85名で、チケットも即完売だったの。
お姉さんには、岩田(いわた)さんとご一緒に来てもらいたかったけど、この次は
ご招待させていただくわ」

「楽しみにしているわ、美樹ちゃん」と美咲。

「美樹、おれたち家族全員も、招待してほしいな」と父の和幸(かずゆき)もいう。

「はーい、わかりました」というと、美樹は無邪気なあどけない表情でわらった。

「美樹ちゃんは、いつも幸せそうよね!陽斗(はると)がいるからよね!」

「お姉さんだって、岩田さんがいるから、いつも幸せそうよ!」

「まあ、そうだけどね」と美咲。

「なるほど、男って、そんなにいいものかな」と、ふと、父の和幸(かずゆき)がいう。

「やだーあ、お父さんたら」とって、美樹はわらう。

「もう、お父さんってば」と、美咲もわらった。

 リビングは、明るい笑い声であふれた。

≪つづく≫
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