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雲は遠くて
37章  川口信也の妹の美結(みゆ)、やって来る (4)
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足させてゆけば、心も身体(からだ)
()たされて、世界の平和にもつながるかもしれないですよね。
そのためには、地球環境を(こわ)さないことや、他者の迷惑に
ならないこととかの倫理や道徳も欠かせないでしょうけど」

 信也がそういう。

「そうですよね。快楽的に生きることは、正しいと、ぼくも思います」

 幸平もそういった。

「そうよね。エッチなことって、すぐ不真面目とか不道徳とか、
タブー視されちゃうわけですけど、地球環境は壊さないもんね。
それに、ふたりの合意でするものですよね。ひとりでするときも
ありますけど。あっはは。でも、他人の迷惑にならないんだから、
とても平和なことよね、エッチって」

 シャンパンに酔っている麻由美は、生ハムをつまみながら、そう語る。

「性的なことを低俗的に扱うのって、なぜなんだろうね」と幸平。

「そうだよね。人生や幸福や不幸を、性的なことが、左右したりすることも
多いのにね。それをタブー視して、隠すのって、不思議なとこあるね」
と信也。

「まあ、どこかの世界的な宗教の教えとかで、エッチな行為を禁止していたりね、
そういった権力的なものが、エッチを悪い行為として、隠蔽(いんぺい)したり
禁止したりするんだろうね。でも仏教の理趣経なんて、エッチは清浄
(せいじょう)な行為で、悟りの極致というか、悟りの境地といっているから、
おおらかでいいよね。もっとも、エッチな欲望を(みずか)らコントロールできる
境地に達するにはそれなりの努力や経験とか必要なんだよね。
ただ簡単に知識的な理解をしたところで、それだけでは、悟りの境地にまで
達するということが無理なのは、当たり前だろうけどね。しかし、
エッチな行為を清浄といってのけているとは、画期的だよね!あっはは」

 そういって、高層ビルの立ち並ぶ夜景を眺めながら、竜太郎はわらった。

「理趣経ですか。空海が中国から持って帰ったという極秘の経典ですよね。
あれは、いいですよね、おれも好きです。その極秘の経典が簡単に
読めるんだから、現代人は幸せかもしれないですよね」

 そういって信也は明るくわらうと、みんなも声を出してわらった。

 店のスタッフの女性が、たっぷりの(はな)やかな(いちご)
しっとりしたスポンジと、濃厚なクリームの、パティシエ特性の
ケーキを運んできた。

「かわいいケーキ!」

「おいしそう!」

 ケーキの白い板チョコには、チョコレートで、Happy Birthday
(ハッピー・バースデー)とメッセージが書かれてある。

 スタッフの女性は、気持ちをゆったりとしてくれる笑顔で、
手際よくケーキを人数分に、小皿にとって、みんなに()けた
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