暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜Cross world〜
cross world:交際
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「………………」
「………………」
《剣聖》と呼ばれた少年と、《流水》と呼ばれた少女は、イグドラシルシティの大通りに面したオープンテラスの一席に座っていた。
綺麗な木目が残る卓上には、コーヒーが少しだけ残っているカップが一つだけあった。
ガヤガヤガヤ、と。
大通りを行き交う色とりどりの妖精達のざわめきも、二人の鼓膜を震わせる。
「………………戻ったな」
「………………戻ったね」
張り出した屋根の端から空を見ると、緩やかに流れていく千切れ雲が見えた。
イグドラシルシティの賑やかさ、華やかさと相対的なその穏やかさが、戦いの最中でいきり立っていた心が、ゆっくりとした速度で静まっていく。
「………ねぇ、ソレイユ」
それを言葉もなく見守っていると、《流水》ルナは唐突に口を開く。
しかし、彼女自身もなぜ自分が口を開いたのか分からなかった。気が付いたら口が動いていた。そんな感じだった。
当然ながら、その後に続く言葉も思い浮かんではいなかった。
数秒の時間の後、言葉を選びながら彼女は自らの思い人に向けて再度口を開く。
「何かあったの?楽しそうだけど」
「ん?」
言われた言葉に不思議そうに首を傾げ、《剣聖》ソレイユは己の口に手をやった。
そして気が付く。
自分の口角が高く上がっていることに。
笑っていた。
楽しそうに。これ以上なく楽しそうに。
その理由に思いを巡らせると、すぐに思い至り、瞳を閉じながら笑みを深めた。
「……まっ、色々とな」
ふっ、と。
いつものように澄ましたように笑う。
何を思ったのか、手に持つグラスを一気にあおる。ソレイユの想像以上の量が残っていたため途中でむせ返ってしまう。
そんないつもは見れない恋人の姿をくすくすと笑いながら、ルナは頬杖
をつく。
―――あ〜あ。
げっほ、えほ!と咳き込む彼の背中をさすってやりながら、ルナと口元には深い笑みの余韻があった。
―――戻ってきちゃったんだな。
目の前で咳き込む少年には口が裂けても、文字通り墓の中に入っても言えないが。
あの無垢で無邪気で無色透明な少年と、もう少しだけ話をしていたかったという思いが、胸の中にわだかまっていた。
しかし、その思いは決して不快なものではない。
あんまり青春ぽいことを言いたくはないが、例えて言うなら、全力を尽くした試合で負けた後のような。モヤモヤとしたものは一つもない、いっそ清々しいまでの爽快さがあった。
もう二度とは会えないだろう。
それでも、自分はおそらくあの少年の事を一生記憶に留めておくだろう。
あの少年は、そこまでの強烈な印象を振り撒いていた。
「………
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