第三十七話
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評価ではなく、実際譲二は変化球でコースを突かれるとさっぱり打てないし、元々穴が多い上に現状スランプとなると、これではバッテリーも安心して当たり前である。
ブン!
「ストライク!」
浦中の投じた初球はカーブ。譲二はタイミングが全く合わない。前の打席ではいい当たりをしたが、打撃の本質は変わっていないようである。
「ひきつけろよー!タメ作って、顎引いてライトに打てー!」
ベンチから権城の声が飛ぶ。
その声を聞いて「お、おう」と自信なさげに返事をする姿には哀愁が漂い始めている。
ブン!
「ストライク!」
二球目も同じカーブで空振り。
しかし大友は、譲二のスイングの変化に気づいた。
(……さっきよりちょっとはマシになった?)
ベンチからの権城のアドバイスが効いたのか、譲二のスイングは少しカーブの軌道に近づいた。
(ま、多少対応はするだろうが、しかしここまで打てない球がいきなり打てるようにはならんだろ。それができる奴ならここまでスランプ長引かない。決め球はカーブで決まりだが……)
ここで大友は悩んだ。
(一球ストレートで外しとくか?……いやいや、6回にその遊び球を打たれたりもしたんだ。こいつらボール球でも振ってくる。なおかつ本田のパワーだからな。ストレートはリスキーだろ。……やっぱりここは、タイミングの合ってないカーブをもう一球だ!)
大友のサインが決まった。
(やべぇ、また追い込まれちまった。また足引っ張っちまうのか、俺は……?)
譲二は打席を外して、自分のバットを見つめた。そのバットのグリップエンドに貼ってあるシールが、譲二の目についた。昔に買った菓子パンのおまけのシール。
紅緒がふざけて貼った物だった。
(……紅緒がここまで俺らを連れてきたんだ。小学生のゴムまり遊びから始まった俺らの野球。このまま俺らの野球が終わって良いはずがねぇよ……)
気持ちが折れかけていた譲二に生気が戻る。誰よりもチビで、誰よりも勝ち気で、誰よりも傲慢だった紅緒。自分達はそれに度々呆れながらも、しかし一方で魅せられていた。そして自分達の野球は続いてきた。別に甲子園など目指してはいなかったが、自分でもびっくりするくらいの舞台まで、この準決勝まで紅緒が連れてきてくれた。
浦中が3球目を投じる。そのボールは高く浮いて、曲がり落ちてくる。
(紅緒に恩返しするには、あいつを甲子園に連れていくしかねぇ!)
譲二は権城の言いつけを守った。顎をオーバーなくらい引いて目線を下げ、これでもかと言うほど引きつけてバットを出した。
カァーーン!
快音が響いた。
ーーーーーーーーーーーーーー
(捕れるぞ大西!捕れ!)
大友は捕手のポジションで
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