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雲は遠くて
34章 神か悪魔か、新井竜太郎の野心 (1)
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まった。

「わあ、(しん)ちゃん、すてきなクルマだわ!かっこいい!
しんちゃんに、ぴったしって感じ!」

 そういって、詩織は、きょう初めて乗せてもらう トヨタのハリアーに、
胸を(おど)らせて、大歓(おおよろこ)びである。

「高いクルマだけのことはあるよ。このクルマなら、大切すれば、
20年くらいはつきあえそうな気がするよ。あっはは」

 信也はクルマから降りて、そういうと、まるで可愛(かわい)いペットを
()でるように、エンジンを収容されている白いボンネットをさする。

「信ちゃんは、クルマを大切にするからね。前のスズキ・ワゴンRも、
すっごく、大切にしていたじゃない。わたし、そんな、(しん)ちゃんを
見ていて、すごっく思いやりのある人!って思ったんだから!」

「あっはは。そうだったんだ。よく、おれを、観察していたんだね」

「まあ、そうね。だって、わたしの大切な人のことだもの」

「さあ、きょうは天気もいいし。東京スカイツリー見たり、おいしい
もの食べたりして、ドライブを楽しもうね、詩織ちゃん」

「うん」

 身長175センチの信也と163センチの詩織は、軽く抱きしめあうと、
楽しそうに 微笑(ほほえ)みながら、クルマに()った。

≪つづく≫
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