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雲は遠くて
33章 新井幸平の誕生パ−ティー (3)
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ことを思いますね。そんな2極のバランス、調和がとれないと、健全じゃないし、何かの病気になったり、人間の何かが、おかしくなったり、ノイローゼになったりするると思いますよ」

 野口翼(のぐちつばさ)が、そういった。

「人格は、哺乳類的な脳の大脳辺縁系と、人間的な脳の大脳新皮質との、調和のとれた姿こそが、健全な、オトナの心身の状態だろうといわれていますからね。最近の人は、目先の損得とかで、動きすぎるのかもしれませんよね。そのため、自己研鑽(けんさん)というか、自分自身の力量や技術などの能力を(きた)えたり(みが)きをかけることもしなくなっているんだろうし、そんな悪循環になってしまっていて、社会には、夢も希望も無くなってしまっていて、明るい未来も描けなくなっているんじゃないのかな?」

「なんか、本当の意味でオトナになるって、むずかしそうだわよね、そんな本当のオトナが少ない気がするわよね。そこへいくと、良さんは、すてきなオトナですよ。ねえ、みなさん」

 美咲がそういうと、美樹や真央や陽斗や翼も、「そうですよね、良さんは、すてきなオトナって感じ!」といった。「ははは。まいったな」といって、森川良は()れわらいをしながら頭をかいた。

 そんなふうに歓談している美樹や美咲や真央たちを、エタナールの兄弟、竜太郎と幸平が、カウンターの席から、なんとなく眺めている。

「どうやら、真央ちゃんのことは(あきら)めたほうがよさそうだな・・・」と、竜太郎は、めずらしく元気のない表情で竜太郎がそういった。

「真央さんには、翼くんがいますからね。美咲さんには岩田圭吾さんがいるんだし。竜さんもおれも、哀しき片思いってわけですかね。われらの恋愛騒動の収穫といえば、真央さんの兄の蒼希(あおき)さんが、エタナールに来てくれたことってことですよね。それだけでも、よかったんですよね。彼は優秀だから。まあ、そんなところで決着として、きょうからは、気分を一新して、また新たな恋でも見つけましょうか、竜さん?」

「そうだな。そうしようか。しかし、恋というものは、ままならないもんだよな、幸平」

 竜太郎がそういうと、(めずら)しく弱気な兄に、幸平はわらった。竜太郎もわらった。
それから、ふたりは、「まあ、飲もうぜ」とかいって、グラスに、ビールを()()わした。

≪つづく≫ --- 33章 おわり ---
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