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雲は遠くて
33章 新井幸平の誕生パ−ティー (2)
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、そして、その握りこぶしが、大脳辺縁系(だい のうへんえんけい)といって、大脳皮質のうちの、旧皮質、古皮質からなる部分を表します。大脳辺縁系は、本能的行動や情動や自律機能や嗅覚を(つかさど)っています。いいかえれば、ホルモンのシステムや、免疫システムや、セックスとか、感情とか、それと長期記憶などの重要な部分を担っています」

「フロイトの説の、イドと呼ばれる本能と、エゴと呼ばれる自我(じが)と、スーパー・エゴと呼ばれる 超自我があるいう、3つの分類に似ているお話ですよね」

 そういう美咲に、(りょう)も、やさしく目を輝かせながら、微笑(ほほえ)むと(うなず)いた。

「そしてですね、この脳幹と大脳辺縁系の握りこぶしを包んでいるこの手が、大脳新皮質を表しています。この大脳新皮質は、大脳皮質のうちで、哺乳類(ほにゅうるい)で出現する部分です。カメとかワニとかトカゲやヘビなどの爬虫類(はちゅうるい)にはありません。大脳新皮質は、人間の知的活動に関与していると考えられている部分です。大脳新皮質はとても人間的な脳なわけでして、論理的思考や数学的思考や哲学的な思考などの、いわゆる知性を、人間の知的能力を司ります」

 そんな話をしながら、熱心に聞き入っているみんなを見わたすと、森川良は、ひと息入れた。

≪つづく≫
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