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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第96話 狭間の世界
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 その瞬間、俺とその少女の間に立ち塞がる小さな影。

「どきなさい、有希。あたしは其処に居るバカに用があるのよ!」

 今にも、結露で覆われた窓に手を掛けて逃げ出そうとしている俺を指差しながら、そう叫ぶ少女。
 ここでようやく、事前に渡された資料を思い出す俺。この少女は確か……。

「よぉ、ハルヒ。久しぶりやな」

 涼宮ハルヒ。既に消えて仕舞った平行世界では、黒き豊穣の女神シュブ・ニグラスの種子を植え付けられた存在。但し、過去……一九九九年七月七日の歴史が異世界人、及び異世界の未来人に改変される事がなかった為、今年の七月八日以降は、少し奇矯な行動が目立つが普通の少女と成ったらしいのですが。

 ただ、邪神の種子を植え付けられただけとは言え相手がマズイ。黒き豊穣の女神と言えば、門にして鍵ヨグ・ソトースの神妃とも、名付けざられし者ハスターの神妃とも言われる存在。こんな連中に選ばれた人間を野放しにする訳にも行かず……。
 未だに多くの神族の監視対象と成って居る少女らしい。

 それで、彼女と俺の関係は、と言うと……。二月の事件の際に、俺の異世界同位体と多少の関係を築いたらしいのですが。

 非常に軽い感じで声を掛ける俺。間に立ち塞がった長門さんの頭を躱すようにしながら、右手を俺の方に突き出しネクタイを掴もうとするハルヒ。
 しかし!
 そんな、武術の心得がある訳でもない一般人の少女が出して来る手が、本気に成って逃げようとしている俺に触る事が出来る訳などなく――

 紙一重で躱され空を掴むハルヒの右手。しかし、彼女はそんな事で諦めて仕舞うような人間ではなかった。
 続けて大きく振られた左手を、今度は左足を半歩下げる事に因って躱し、
 同時にハルヒと俺の間に立ち塞がって居た長門さんを、右腕で自らの肩の後ろに移動させる。

 その瞬間!
 あまりに大きく振り過ぎた腕が空を切った瞬間、身体のバランスを崩すハルヒ。そのまま倒れ込むと、俺の胸の中に跳び込むような形と成ったのですが――

 しかし、その刹那。ハルヒを後ろから羽交い絞めにする女生徒が一人。

「危ない、涼宮さん!」

 危ないと言う前に、既に羽交い絞めにしている辺りが並みの運動能力ではない。まして、暴れ馬か、もしくは赤いマントに向かって突進して行く猛牛か、と言う勢いで前掛かりに成って居たハルヒを止める力と言うのは、既に真面な女生徒とは思えない。

「どんな経緯が有るのか知りませんが、取り敢えず落ち着いて下さい、涼宮さん」

 まるで松の廊下で刃傷沙汰に及ぼうとした浅野内匠頭を羽交い絞めにする梶川頼照……などではなく、この少女は確か……。

 このクラスの委員長朝倉涼子。
 身長は俺よりは十センチほど低く、長門さんよりは十センチほど高
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