第6章 流されて異界
第96話 狭間の世界
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輪綾《みなわあや》と言う名前の女性も最初はそう思ったようですから。
故に、「召喚事故?」……と彼女は言ったのですから。
しかし、あの場。――倒れ掛かる俺を長門さんが抱き留めてくれる直前に流れ始めた血涙。
これは、おそらくオーディンの神話の関係。
更に、ハルケギニア最後の事件で俺が右腕を失った事実。
これは、ケルトの神々の王ヌァザの神話の関係。ヌァザは戦闘の最中に一度右腕と王位を失い、その後に失った右腕を再生する事で王位を取り戻した、……と言う伝承が有るのですが。
この部分を今回の事象に当てはめると――
俺が戦闘で腕を跳ばされた部分が被り、暮らして居たハルケギニアから追放された事により王太子としての位を失った点も被る。
そして、この世界にやって来て、医療神の水輪綾の指導の元、彼女の弟子である長門有希により俺の右腕や両足を再生して貰う。
ヌァザの腕を再生させたのは医療神ディアン・ケトとその息子のミアッハでしたから、この部分も微妙に関連性がある。
後は、この世界から、仕事をやり残しているハルケギニア世界に帰る事が出来たならば、それでこの神話の再現は終わると言うのでしょうか。
但しこの神話ですら、その戻った先で起きる戦争でヌァザは死亡する、と言う結末が待って居るのですが。
其処まで思考を進めてから、左手首に回した腕時計に目を遣る俺。
そして、その瞬間。
補習の終了を告げるチャイムが教室内に鳴り響いたのでした。
☆★☆★☆
挨拶が終わり、初老の数学教師がゆっくりと教室の扉を開けて出て行った瞬間。
ガタンと言う荒々しい音と共に立ち上がる一人の少女。立ち上がった勢いに負けて彼女の座って居た椅子は倒れ、後ろの席に座る男子生徒が反射的にその少女を見つめた。その瞬間、教室内に緊張の糸が走る。
しかし、そんな事は委細構わず、こちらの方向に視線を向ける少女。
そして――
俺の方に向けて大股で接近して来るその少女。長い黒髪をオレンジ色のリボンで纏め、視線はまるで獲物を狙う肉食獣のソレ。
怒り……とは少し違う感情ながら、あまり御近付きに成りたくない雰囲気を発しているのは間違いない。
――って!
何か良く判らない状態なのですが、これはヤバイ状況。
向かって来る女生徒の勢いに押されるかのように椅子から立ち上がる俺。
確かに、正面から突っ込んで来るのがバイアキーや牛頭鬼。ジャガーの戦士ぐらいならばこちらもそれなりの対応をすれば良いだけなのですが、一般人が相手では本気に成ってぶん殴る訳にも行かず、まして、こんなに人目の多い場所で瞬間移動などを使用して逃亡する訳にも行かない。
本心から言えば、今すぐ窓から逃げ出したいトコロなのですが。二階の窓から。
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