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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第96話 狭間の世界
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言うか、正規の授業の前に補習授業が組み込まれているこの高校では、実質、午前八時が一時間目の授業の開始と成って居り……。

 二〇〇二年十二月二日。場所は日本の兵庫県西宮市の県立北高校か……。
 軽く開いたり、閉じたりを繰り返す右手……ハルケギニア世界での最後の戦いの際に失ったはずの右手を見つめながら、自らの置かれた時間。そして場所を改めて考えて見る俺。

 ――あの日。ハルケギニア世界的に言うと聖賢王ジョゼフ治世八年目の最後の日。十二月(ウィンの月) 第四週(ティワズの週)ダエグの曜日。ルルド村の吸血鬼騒動が終息した後に発生したゲルマニア皇太子ヴィルヘルム及びキュルケとの再会。その際に自称名付けざられし者の作り出した次元孔。ヨグ・ソトースの扉(オメガの扉)に囚われて異次元を彷徨(さまよ)い、そこから脱出出来た先は元のハルケギニア世界などではなく地球世界でした。
 但し、ここは俺が元々暮らして居た世界などではなく、まったく別の世界。
 確かに日本語が通用し、俺の唱える仙術が存在し、更に、俺が所属していた水晶宮さえ存在する、元々俺が暮らして居た世界に非常に近い世界であるのは確かなのですが……。

 ただ、この世界の徳島に武神忍の偽名を名乗る水晶宮所属の退魔師は存在して居ませんでした。
 更に、俺が暮らして居た世界は二〇〇三年の世界。其処から召喚されて、ハルケギニア世界で二七〇日以上暮らして来たので、元の世界と同じだけ時間が経過していたとしたら、二〇〇四年の一月末か二月初めに戻って来られるはずなのですが……。

 それで、俺がこの世界。元々暮らして居た世界に帰る事が出来ず、何故、この世界にやって来る事に成ったのかと言うと……。

 俺は、俺の隣の席にて定規で引いたような姿勢で、相変わらず板書され続けている数学の公式をノートに書き留めている少女に視線を送る。
 とても同じ人類とは思えない紫色の髪の毛。銀のフレーム越しに黒板を見つめるその瞳は濃い茶系の色。肌は東洋人の色の白い少女のそれ。

 俺の視線に気付いたのか、無の表情を浮かべた少女が俺の方を向く。
 表情は普段の彼女通り、感情と言う物をすべて失くしたかのような表情を浮かべた彼女が。

「授業に集中した方が良い」

 窘めるような……。しかし、こちらも普段通り静謐な、まるで人生のすべてを悟り切った、もしくはすべてを諦めきったのか、と思わずにはいられない口調でそう話し掛けて来る彼女。
 いや、厳密に言うとこの少女は俺が知って居る彼女では有りません。確かに見た目はまったく同じ。少し毛先の整っていない紫の髪の毛。かなり短い目のボブカット……少女と言うよりは、少年のような髪型。しかし、少年と言うには整い過ぎた淡麗な容姿。
 身長。華奢な身体。その言葉使い。

 
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