暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第96話 狭間の世界
[2/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
りの距離が有るように感じるのだが、その空間に存在する樹木がかなりの大きさに見えていると言う事。
 それはまるで天を支えるかのような巨木。かなり離れたここからでも判る、天にも届くかと思われる高く差しのべられた梢。揺れる葉がこすれ合って奏でる楽は爽やかな風の調べか。天の御柱。世界樹などと言う世界を支えると言う巨木伝説は、この目の前に現れた樹の事を霊視した結果なのかも知れない。そう考えさせるに相応しい威容を俺に伝えて来ていた。

 そうして……。

 その樹により近付く事により臭覚が復活。息をしているのかさえ曖昧な状態の中、感じるようになったのは異様な臭気。
 それはそう。まるで()えた肉が発するかのような、酸っぱい臭い。明らかに肉の類が腐った……。どう考えても、世界を支えると伝説で伝えられた樹とは考えられない異常な臭気。
 そして同時に感じる視線。
 それまでは俺以外の気配を感じる事のなかったこの異様な空間に感じる、圧倒的多数の何モノかの気配。
 湿った、悪意のある視線が俺に纏わり付くようで非常に不快な感覚。

 ――マズイ!

 これ以上、その巨大な樹に近付くは危険。復活したすべての感覚がそう警鐘を鳴らす。
 いや、それだけではない。その理由は既に判って居る。

 近付くに従って感じるようになった違和感。
 周囲に積み重なるように降り注いでいる枯れた葉。そして折れた枝。
 太い幹に絡み付くのは鱗に覆われた巨大な胴体。それは、幹を何重にも渡って締め上げ、枝をへし折り、そして多くの葉を枯らす瘴気を発す。
 いや、何故か大地の下。根に噛り付く小さなソレたちの姿も見える。

 その刹那。
 赤く光る無機質な……爬虫類に相応しい瞳が俺の姿を捉えた。

 こいつはヨルムンガンドなのか?
 明かりに向かって進んで居た状態から急制動を掛け、瞬時にそう考える俺。
 巨大な樹に絡み付き、その樹を枯らそうとしている蛇。頭頂部は完全に枯死している事が見て取れ、一部の枝や葉。根からのみ僅かに生を感じさせる。
 そして、その無数の蛇たちが放つのは死臭。この鼻……いや、俺の精神さえも腐らせるような腐臭が、この巨木を死に追いやって居るのは想像に難くない。

 その瞬間、鎌首をもたげ、突如目の前に現れた闖入者を睥睨していたその蛇から放たれる何か。
 それは凄まじいまでの悪臭を放つ黒き液体。

 枯葉を、へし折られた枝……俺の胴体ほどの太さのある枯れ枝さえも巻き込み、赤の世界を奔る津波と化した黒き液体が、俺を目指して殺到する!

 身体の前面にすべての能力。生来の重力を操る能力を動員して、その黒き濁流を防ぐ不可視の防壁を発生させる俺。
 これはおそらく、伝説に伝えられるヨルムンガンドの毒液。北欧神話最強の雷神と言われたト
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ