第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第一節 離叛 第四話 (通算第44話)
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シャアとアポリーは機体を《ガンダム》の墜落地点に降下させた。機体は落下地点を中心に対角を保ち、いつでも挟撃できるようにしている。ロベルトを上空に残し、二人を警護させていた。
「所詮は実戦を知らないエリートだな」
「特にティターンズは戦後世代が主流ですからね」
アポリーは肩を竣ませて答える。
戦後世代が主流にならざるを得なかったのは、一年戦争による被害――中高年層の激減にあった。それは連邦軍の組織構造を著しく損なわせた。そもそも地球三軍は被災規模が大きかった分、人的被害も甚大であった。壊滅後、再建された宇宙軍も最終決戦で大きく数を減らした上に、戦後の軍縮政策と戦後退役で戦争経験を積んだ俄ベテランさえも減ってしまった。
地上軍は地球全体を防備するには足りないほどになっており、宇宙軍の防衛ラインに依存し、宇宙軍主導の軍政体質の遠因にもなっている。陸軍は拠点防衛が精一杯であり、海軍もシーレーン防衛はハードウェア頼りで、湾岸警備に留まり、空軍にいたっては拠点防空以外に何もできないほどに縮小してしまっていた。
地上三軍に比べ宇宙軍は比較的組織の補強がなされたが、中堅層が薄くなった分、若年層や士官学校卒業生の佐官昇進が目立つようになっていた。戦場経験者が中隊の一割以下という新兵部隊などざらである。
どの軍も、戦後世代は親や親戚のコネクションによる配属や昇進が多く、能力よりも血統や派閥人事による任官が横行していた。叩き上げの多いジオン共和国軍からすると、歪な組織である。
シャアがセンサーの示す二機の《ガンダム》と三機の《クゥエル》の光点を確認する。狙うのは墜落した機体の方と決めて、二人に指示を出した。
「〈フォレスト〉は増援の牽制を。〈スターシャーク〉は回り込んで《ガンダム》を追い詰めるぞ!」
「諒解」
「精々派手に遊んでやりますよ」
シャアが呼んだ二人のタックネームは昔のものだ。実は共和国軍に復帰した際に新しいタックネームを付けたのだが、シャアが馴染まなかったのである。その内に、旧いタックネームに皆が馴染んでしまった。
圧倒的不利な状況にもかかわらず、二人には余裕さえ感じられた。いざとなれば逃げ切る自信があるのだ。今はその余裕が頼もしかった。ベテランパイロットである二人となら、この任務を果たせると睨んだシャアの慧眼とも言える。
三対五。
絶対数の差は増える可能性の方が大きく、減らすのは骨の折れることであった。だが絶望的数字ではない。だがこれ以上のハンデがつかぬ内に、早く任務を果たしてしまう必要があった。
眼下にあるのは瓦礫にまみれた庁舎である。半壊した建物に黒い《ガンダム》が仰向けに倒れていた。かなり埋もれており、無理に引きずり出せば、大破とはいわないが、中破しそうな程である。
「大尉、どうします?」
アポリー
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