第一部 刻の鼓動
第三章 メズーン・メックス
第一節 離叛 第一話 (通算第41話)
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コロニーの陰に二機のMSが取りついていた。アポリー・ベイとロベルト・フォスの《リックディアス》である。シャアと別れた後、作戦に従って〈グリーンノア〉に取り付いた二人は、ミラーの裏に隠れ、ピーピング・トムと呼ばれる有線式カメラを〈河〉のガラス越しに出し、コロニーを監視していた。《リックディアス》の手甲――マルチプルランチャーに繋がれた光学カメラはミノフスキー粒子撒布下であっても詳細な映像を結ぶ。
「こっちは普通のコロニーだな」
「やはりアチラか」
二機は接触回線で通信している。コロニーとの相対速度は0。感覚としては静止しているのと変わらない。
ピーピング・トムが映し出していたのは、何処にでもあるコロニーの情景であった。様々な場所を映像でウィンドウに出していると、ロベルトが空の変化に気付く。
「ん?」
「モビルスーツか?」
ロベルト機の反応にアポリーがモニターに映る機影を探す。メインベイのメンテナンスハッチ付近に黒い機影が映っていた。
「見たこともないやつだ。新型かっ」
違う角度からも確認した。最大望遠でも小さく映し出されたのは、肩に《03》と描かれた黒い《ガンダム》である。さらに、地上の倉庫らしき場所にも同型のMSが搬入されていくのが見えた。
コロニーの空を滑空する《ガンダム》の姿に二人は驚嘆の念を抱く。あまりにも人型を真似しすぎていたからである。MSは人型でありながら兵器としての駆動から人型になりきれない部分がある。しかし、新しい《ガンダム》はその常識を覆していた。初代《ガンダム》のようなセミモノコック成形によるブロック構造とは原理的に異なる技術で造られているとしか考えられなかった。
「……連邦は新しいMS技術を開発したと見える」
ロベルトが思わず洩らす。元来無口な質である彼が呟くほどの衝撃的であったのだ。ロボット工学を志していた彼には、その技術の凄さと研究者の執念、そして凡そジオンを排斥した連邦の――いやティターンズの硬直した意志が見えてしまったのだ。
当時、MS開発においてアドバンテージを持っていたのは、やはりジオンである。大戦末期、連邦が《ガンダム》の開発に成功し、特にビームライフルの大量配備を行ったといっても、ジオンとて《ゲルググ》などのMS開発を成功させており、個々の性能を比較すれば、ジオン製のMSの方が上であった。連邦製MSが優っていたのは整備の汎用性だけであり、ソロモン戦、ア・バオア・クー戦に勝てたのは連邦のMSが優れていたからではなかった。
戦後、連邦においてMS開発は盛んに行われていたが、多くは地上用のMSと《ジム》の発展後継機であった。最近になって新しい設計思想の機体が開発され始めていたが、量産されてはいない。唯一の例外が、『ジオンの宝』とさえ言われたエリオット・レム技術大佐の手による空戦型の
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