第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十四日:『幻想御手』
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魔と生物が潰れる音と共に『忍び笑い』が消えた。
「そうか、忘れてるのか……仕方ないなァ、先輩は」
にこりと、少女のようにも見える彼は、笑いながら……
………………
…………
……
後方に流れていく車道、その勢いさえももどかしい。踏切の赤信号に引っ掛かった今などは、無視してしまおうかと思った程だ。
──結局、警備員でも幻想御手事件の核心に至るものは無かった。黄泉川さんも手を拱いているだけらしい、あれだけの女傑が。
随分とまぁ、周到らしいな、犯人は。絶対、電脳狂だな。
「チッ────もしもし」
その時、携帯が震える。誰かは分からないが、取り出さずに耳掛けのインカムで受けた。僅かに、苛立ちの為に声を荒げて。
犯人の尻尾すら掴めない不甲斐なさに、苛立って。
『もしもし、対馬先輩! 今、何処に居りますの?!』
それに返ったのは、彼の声を上回る勢いの黒子の声。かなり切迫した様子で、声を荒げて。
運悪く、目の前を電車が通る。騒音に、更に声を張り上げる。
「今、木山春生の研究所に向かってる! 飾利ちゃんと合流する予定だ!」
『そうですの……好都合ですわ!』
「『好都合』、って────うおっ!?」
切羽詰まった口調で訪ねる彼女、それに理由は聞かず手短に答える────と同時に、後部座席に衝撃。後続車にカマでも掘られたのかと思い、振り返れば。
「急いでくださいまし、初春と連絡が取れませんの!」
「飾利ちゃんに?! 何があった、いや、判ったんだ!」
「説明は道々いたしますの、早く出してくださいな!」
リボンとツインテールが、フワリと舞っていた。即ち、携帯のGPSで座標を特定して空間移動してきたのだろう、後部座席にいきなり現れて座る黒子の姿。
度肝を抜かれたが、今はそんな場合ではないらしい。何しろ、あれだけ避けられていた彼女が自分のところに来るなど、正に緊急事態以外の何物でもあるまい。
そして、アクセルを回した刹那────
「誘導は、お願いしますわ」
「────成る程、その手があったかッ!」
黒子の空間移動により、まだ電車が通行中の踏切の向こうに出た。
────流石は大能力者判定の能力者、だな。ホント、スゲェとしか言いようがねェ。
俺なんざ、右腕だけをホンの数メートル先、しかも停止した物に向けてしか成功しねェ。バカデカい蚯蚓でもなけりゃあ。
快哉を唱えてそのまま、全速力でバイクを走らせる。最早、フルスロットルだ。
前方の邪魔な車や赤信号を、次々と空間移動ですり抜けながら。クラクション
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