第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十四日:『幻想御手』
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女。即ち、白井黒子と御坂美琴の二人が。
その二人、学園都市有数の能力者二人組にして美少女二人。その二人に纏めて声を掛けられたのだから、今までの彼なら喜んで軽口の二つや三つ、いや、四つか五つくらいは叩いていた筈。
「──集中治療室に。悪ィンだけど、代わりに先生の話、聞ィといてくれるか」
「代わりに、って……あなたは、どうするんですの?! 対馬先輩、こんな時にまで自分勝手は────!」
それもなく、代わりに一言だけ口にして、擦れ違って歩き去ろうとする。誰がどう聞いても、確かに身勝手だろう。
それに、思わず黒子が手を伸ばす。華奢な右手、握り締める右拳を掴み────
「っ──?!」
逆に、その右腕を極められて。理合だけではない、所謂『柔』の技術との複合で。
制御を離れた両膝が、笑っている。なまじ合気を齧っている黒子だからこそ、それは理解できた。
「頼むよ、時間がねェンだ。俺ァ、もう一人も犠牲は出さねェって……決めちまったからさ」
瞬間、身動きの取れなくなった彼女。その掌に……データを抜き取った後の涙子の音楽プレーヤーを握らせてから、黒子を解放する。
にこりと、一応は笑っていた。しかし、確実に……その、蜂蜜色の瞳は爛々と。怒りの煌めきを宿し、決して笑ってなどいなかった。
「……分かりました、こっちは任せといてください、対馬さん」
「お姉さま、ですけれど!」
「くーろーこー、あんまりごちゃごちゃ言ってんじゃないわよ。あんた自身の先輩を信じる事もできないわけ?」
そんな空気を吹き飛ばすように、笑いながら告げた美琴。黒子の反駁にも、鷹揚に。
「ただし────やるって言ったらやり遂げる人ですよね、対馬さんは」
「…………あァ、済まねェ。恩に着る」
最後に、そう釘を刺してきた美琴に頭を下げて背を向ける。目指すは、警備員支部。そこで、どうあっても手懸かりを掴む為に。
先程錬金した、二人乗りが出来る最低強度の超軽量バイクを嘶かせ、時速六十キロで約二十分ほどの距離の其処を目指す────
………………
…………
……
待ち呆け、が最も適切な表現か。少年は、駅前通りの日影に身を潜めて待っていた。ただ、その『声』を。
右手に持つ音楽プレーヤーで何かを聞きながら、左手に持つ『本』のページを捲って。
『____________』
刹那、耳元に声。幽かに、しかし確かに。明らかに、忍び笑う声が。
「……そうか、見付けたか。ご苦労さん、じゃあな」
『____ギィィィィィィ!?!』
少年────古都は、そう口にして『目に見えない何か』に触れた。そう、触れただけ。
それで、大気が震えるような断末
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