第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十四日:『幻想御手』
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不良達、見下して立つ少年。その、女性にも見える麗らかな唇から。
「対馬主将を、越える日が来たんだから……喜ばないとな、■■■■■」
微かな、ほんの微さかに立ち込める腐臭と共に、金属の装丁を持つ『ソレ』を握りながら、彼はそう呟いた。
………………
…………
……
悪かったのは、誰か。自問しようと他問しようと、その答えはでない。多分、悪かったのは……運、だけだ。それで、良い筈だ。
「危ないところ、だね。まぁ、最近は随分と増えた症例だが」
目の前の、医師の言葉を聞く。臍を噛むような、苦虫を噛み潰したような顔で。ただ、一人。
「昏睡、原因は不明。他と同じ。全く、君たちは……風紀委員にせよ警備員にせよ、被害ばかり出して一体、何をしているのかな?」
「……お返しする言葉も、在りません。先生」
呟き、椅子ごと振り返った蛙顔の男性。知る人は少ないが、学園都市最高の医師。あらゆる『天国行きの予約を反故にする』────付いた渾名が、『冥土返し』。
何を隠そう、かつては自分自身が世話になった相手。だから今でも、頭の『あ』の字も上がらない。
──結局、佐天ちゃんは意識不明の状態で見つかった。勿論、幻想御手使用の影響で。友人の娘二人から聞いた話では、二十一日に使ったらしい。
飾利ちゃんに電話した直後に倒れ、駆け付けた時には、もう。
握り締めた拳、裂けんばかりに。不甲斐ない、また、この手は取り零した。
大事なもの、日常。何でもない、普通。また、それを掴み損なった。
「……後輩が来る予定なので、自分はこれで。彼女の事、宜しくお願いします、先生」
眠る彼女を一度見遣り、部屋を後に。やる事は、幾らでもある。第一────本来、ここに居るべき少女が自分から事件解決の為に、今も奔走しているのだ。
──今、飾利ちゃんはこの事件の解決に協力してくれている脳科学者『木山 春生』女史のところに行っている。昏睡した友人を、見てられなかったんだろう。
クソッタレめ、犯人の野郎……見付けたらタダじゃ置かねェ。
歯噛みし、廊下を曲がる。一刻も早く事件を解決する為に、もう怠けている暇はない。
──後悔しろよ、クソッタレ。俺の、手の届く内に手ェ出した事を……な。
刹那、『魔術使い』の顔で────左手に握っていた涙子の音楽プレーヤー、音楽ソフト『幻想御手』を見詰めた。
「対馬先輩!」
「佐天さんが倒れたって────」
「ああ……白井ちゃん、御坂」
そこに、現れた二人の常盤台の少
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