第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十四日:『幻想御手』
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。今も、今も。
救いを求めて? 否────断じて否。これは、誰かに助けを求める声ではない。
「だから────そんな悲しいこと、言わないで……」
──これは、自ら。己の意志で誰かを救おうとする、決意の声だ!
ならば、それを聞いた己が為す事は何か。全く持って、状況は読めないが。だが、だからこそ思考、早く。速く。回転する、悲劇を迎えぬ為に。
何が起きているのかと、無関係と言う免罪符をひけらかして阿呆面で見る眼差しや。痴話喧嘩かと、下衆な勘繰りで興味を向ける浅ましい眼差し。或いは、少女の涙に、訳も知らぬ癖に義憤に満ちた偽善の眼差しを向ける者達など、何するものか。
「────!」
刹那、右手が奔る。窓硝子、いや、人一人が通れる程に車体、触れた刹那で消し飛ばして。
「行こう、飾利ちゃん。佐天ちゃんの所に」
「っ……先……輩……」
差し出したのは、その右腕。俄に騒ぎになった車内で、錬金術行使の影響により、削れた命と反動により僅かに震えている。今は昼間、『正体不明の怪物』の時間ではないのだから。
それでも尚、矍鑠と。彼女に、その気高い意志に、輝きに。心からの敬愛、示すようかのように。
「……はい!」
握り返された掌、確りと掴んで飛び降りる。目の前には、舗装された路面?
否、そこには──青い、車の天井が。着地と共に、暴れ馬の如く揺れた車を走査する。問題はない、在るのは責任だけ。
分解と再構築、それは速やかに。運転手には最大配慮、安全に停車帯に寄せて。
言い訳なら、幾らでも出来る。ここは学園都市、異能の坩堝。確率、この車が『別の物だったかもしれない確率』。唯一の『確率使い』がそう言えば、他の誰に否定できるものか。
「────え?」
車の下部と、ハンドルだけを持った状態で。
「え、え? な、なんですか、これ、この状況?!」
慌てふためき、呆気に取られながら、辺りを見回す────ピンク色の髪の、幼女といっても差し支えの無さそうな見た目の女性。
「申し訳ありません、損害賠償は必ず致しますから、どうか御勘弁を。可愛いらしい淑女!」
車を再構築したバイクに跨がり、飾利を背後に乗せて。そんな言葉を残し、一秒が惜しくて走り去る。
後には、無惨なもの。
「……まだ、ローン……残ってるのに」
茫然自失で呟く、女性が残るのみだった。
………………
…………
……
「ヤキソバパン……か」
呟いた声は、愉しげに。薄暗がりの路地裏、そこにある数人の呻き声に混じって。
「そう、だな……ああ、遂に」
倒れ付した屈強な
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