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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十四日:『幻想御手』
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「────何を、当たり前の事を格好つけておる。子供の問題じゃ子供が始末をつけんでどうするのじゃて」
「あはは、流石は先生だ。話分かるー」

 笑って、頭を下げる。そうと決まれば、先ずは彼に確かめねばならない。時間は、あまり無いかもしれない。
 『幻想御手(レベルアッパー)』を使用した者は、時間が経つと昏睡してしまう────それはもう、風紀委員では確実視されているのだから。

「気を付けい、対馬。蘇峰の『質量操作(マス・ゲーム)』は更に強くなっておる。今までと同じとは、思わぬ事じゃ」
「はい……」

 小さく頷き、武道場を後にする。言われなくても、彼を甘く見た事など一度もないが。
 あの能力(スキル)は、長じれば高みに昇る能力だ。『制空権域(アトモスフィア)』など、目でもないくらいに。だから────

「気の所為だったで頼むぜ、蘇峰────」

 そんな、祈りのような言葉と共に。懐から携帯を取り出した。コールするのは、風紀委員の同僚。
 『初春飾利』と『白井黒子』、その二人に。


………………
…………
……


 そして、結局。通話に出たのは飾利だけであった。

「あ、あの……何か、用事があったのかもしれませんし」

 明らかに頬を引き吊らせながらの笑顔。まさか、本当に着拒とは。幾ら嚆矢でも、想像だにしていなかった結果であった。

「ウン……ソウダネ」

 よって、そんな体育座りで。辛うじて、待ち合わせ場所のバス停前に駆け付けてくれた飾利の関心を買う。
 『着拒じゃなかっただけマシだ』とか、『最低からは昇るだけ』と己を慰めて。

「ところで、『幻想御手(レベルアッパー)』の手懸かりを見付けた』って言ってましたけど……どんな手懸かりなんですか?」
「ああ、正確には『かもしれない』ね。実は、後輩の一人が幻想御手(レベルアッパー)を使ったような能力の上昇をしてるらしいんだけどさ」

 気を取り直しての説明と共に、携帯を取り出す。コールする先は『蘇峰 古都(そほう みやこ)』、その人。
 約五回、コール音が鳴る。駄目かと思ったその直後、やや間を置いて相手が出る。

「もしもし、古都か? 俺だ、嚆矢だ」
『……先輩ですか。何か、御用ですか?』

 寝起きのような、気怠げな声。たまに、欠伸のような吃音が混じる。

「おう、ちょっと『ヤキソバパン買ってこい』よ」

 唐突な物言いに、隣では飾利が呆気に取られた顔をする。あの甘ったるい声を口の中で、『ヤキソバパン……?』と転がしている。

──まぁ、要するに『仲間内の符丁(あいことば)』だ。因みに、『ヤキソバパン』は『今から会おう』。
 息を呑んだのが、自分でも分かる。信じたい、だからこそ、明らかにしな
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