第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十四日:『幻想御手』
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『“合成物体01号”』
──だが、ああ。大丈夫、屈しない。知っている、そうだ、最後まで屈しはしなかった。
だって、これは……俺が、ボクが忘れたモノだ────
「───そう、君が忘れた過去だよ」
──だから、気付かない。気付けない。視界の端、映り込む……純銀に。
「やっぱり、忘れていく。君も、そうなんだね────コウジ」
──気付けない、ままで……
………………
…………
……
思い出していたモノ、覚えていない。覚えていないが、忌々しい事を思い出すのも全てはこの静寂、静寂、静寂の所為だ。
白昼夢か、まだ、昼には早過ぎるが。そんな刹那にも、夢見た伽藍は崩れて消える。
──無心だ。無心を貫け。波の無い水面、明鏡止水。無念無想、空虚、伽藍────
物音一つ無い武道場の畳の上に、道着姿で正座する。キイン、と無音が耳に煩い。
まだ、明けて間もない夜の気配が残る室内。そこに、嚆矢は一人、瞑想する。
──一瞬。ホンの一瞬だ。その刹那に、全てを掛ける……。
その前方、約五メートル先の床の上に置かれた小さなモノ。嚆矢は、蜂蜜色の瞳でそれを睨み────
「────ッ!」
一閃、右腕が閃く。刹那、その異形の右腕、異境の刃金と化して。
『副魔王ヨグ=ソトース』を内包するダマスカス鋼、常人では見えない異界の色彩が一瞬だけ顕現して。
「……よし、大分ピンポイントでも使えるようになってきたな」
間違いなく掴み取った『実感』に、達成感と共に右掌を開く。そこには────
「……力加減は、まだまだ要努力だけど」
脱力してしまうくらいに握り潰され切り裂かれ、ぐちゃぐちゃになった……『ピンポン玉』があった。
『時空輪廻』の効果の応用、一種の空間移動だ。『虚空』そのものであるこの右腕により、本来ならば触れる事もしていないモノを掴み獲る。更に、『時空』を掴む魔術なので、物質の内外や硬軟は問わない。
だが、その所為か、加減が極めて難しい。こうして、軟らかいものも硬いものも粗方握り潰してしまう。
怪神の右腕は、切れ味も握力も怪神な様である。そして、朝昼はその一瞬の顕現だけでも、一キロ走を全力疾走したくらいの疲労がある。
「やっぱ、空間把握系の能力は才能だなぁ……こう言うの程、白井ちゃんのアドバイスがあれば上達早いだろうに」
通算三十回目の失敗に、伸びをしながら仰向けに倒れ込む。投げ出されたピンポン玉、過たず二十九の同じものが待つゴミ箱に。
──無いな。我ながらアレだけど、有り得ないわ。もしかしたら、着拒されてるかもなレベルだし……
思い出
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