第四章 炎
第8話 琴里の気持ち
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士道「そっか。俺、そんなに緊張してたのか」
あの後逃げるようにトイレに向かった士道は頭をわしわしとかいた。
なんとも情けなかった。自分の行動に。
士道はすぐに戻るのも変なのでそのままトイレへと向かった。
その時、
士道「ん?」
と、その道中。士道は不意に足を止めた。
トイレの前に並んだ自動販売機、その後ろから………聞き慣れた声が聞こえた気がした。
士道「なんだ……?」
不審に思い、足を運ぶ。
神無月『士道くん、そこはーー』
いつ復活したのか分からない神無月の静止より早く、そこを覗き込んでしまった。
そして、言葉を失った。
そこには黒い鞄を携えた令音と壁にもたれかかるように苦しげにアタマを押さえる琴里だった。
なんで琴里があんなに苦しそうなんだ?
と、その時。
不意にトントンと形を叩かれた。
ゆっくり後ろを振り返ると、
そこには杖をつき、紺色の水着を着た一方通行がいた。
場所が場所なのでちゃんと水着姿には着替えているようだ。
士道「一方通行……?何でこんなところに……」
すると、一方通行は士道にしか聞こえない声で話し始めた。
一方「あいつは、霊力を戻した瞬間からずっとあの状態だった」
士道「……!?」
一方「テメェには知られたくなかったンだろォな。今日がタイムリミットだってことを。同情してデートして欲しくなかった……と思ってンじゃねェか?」
士道も少しは予想していた。しかし、それがはっきり明示されると……
士道「琴里……」
無意識に呟いてしまった。
と自動販売機の後ろから声が聞こえた。
令音「大丈夫かい、琴里」
琴里「ええ、なんとかね。でも危なかったわ。……お願い」
令音「今朝の時点でもう既に通常の50倍もの量を投与しているんだ。これ以上は命に関わる恐れがある」
琴里「……お願い。士道との……おにーちゃんとのデートなの。もしかしたらこれが最後かもしれないの。もし失敗したなら、私は私でなくなる。その前、におにーちゃんとのデートを、最後まで」
令音「……」
令音はしばしの間無言だったが、小さく息を吐くと同時に傍に置いていたかばんの口を開け、中から注射器を取り出した。
琴里「ありがとう。恩に着るわ」
令音「いや、しかし、これが最後だよ……」
士道「………」
士道は息を詰まらせ、唇を引き結んだ。それを見計らったように一方通行が士道に声をかけた。
一方「こォいうことだ。今のは見なかったことにしてくれ。あいつのためにも……な」
士道「………分かった」
その言葉を聞いた一方通行は、無言でどこかへ行った。
士道も十香達のところへ
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