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雲は遠くて
20章 店長・佐野幸夫の誕生会 (6)
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佐野幸夫が、となりの席の翔太に、
そう(かた)りかけた。

(ゆき)さんに、おれが、講釈(こうしゃく)できる
わけもないですけど、
あの楽聖のバッハが、
2、3%は才能、あとは、97%の厳しい練習で決まる、
といっているんですが、
努力の差で、違ってくるのかなって、
おれも、そんな気がするんですよ。
よく、天才は、努力する才能だとかって、いいますものね」

そんなことを翔太はいった。

「そうですね。10年間、気づかないとかって、
努力が()りないだけかもしれないですよね」と幸夫。

「おれは、努力のほかに、集中力が違うような気がします。
何かを成しとげるときの、集中力の違いが、
天才と凡人では、違うような・・・」

といったのは、矢野拓海(やのたくみ)であった。

拓海は、早瀬田(わせだ)大学、理工学部、3年生。
ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の幹事長で、
音楽家 モーツァルトを、尊敬(そんけい)している。

≪つづく≫
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